大和まほろば奇鬼妖神 煌御門の陰謀【プロローグ】より抜粋
紀伊にそびえる八つの峰に囲まれた宗教都市の中心部の外れ、鬱蒼とした林の中に、凡そ参拝者が訪れることのない寺院の敷地内に設けられた草庵の縁側に座る燕尾服に身を包んだ男と金髪長髪に作務衣を着崩した男がいる。二人は目の前の小さな池に写り込んだ月を愛で、秋虫の声に耳を傾け、穏やかな空間の中にて静かに酌み交わしていた。
この場所にはとうてい不似合いな恰好の燕尾服の男が視線を園庭の中央に向けおもむろに口を開いた。
「おや、お客様ですね」
青北風にまだ青さの残る草木の落ち葉が舞散らされると、その場所にいつから居たのか、赤い着物服姿の女が立っていた。
「……楓か……いつもの登場かい、ヒネリがあれへんなー」
金髪の男は突然に現れた女を見やり驚いた風もなくぶっきらぼうに言い放つと、手に持っていたグラスの中の麦酒を勢いよく口に流し込むと喉を鳴らしながら一気に飲み干した。
「ご無沙汰しています、ミサキ様。――――大佐」
澄み切った刻(とき)≠フ中に佇む女、朝靄の残る湖畔に響き渡る竪琴のような透き通る声、上質の金糸・銀糸だけで織られたような光沢のある布地に染め上げられた優美な紅葉柄の振袖と美しく長い黒髪は月光を照り返し煌めき、練絹のような白い肌と相俟って天女と見紛うばかりである。
それ以上に、楓と称呼された美の結晶体からにじみ出る人間離れ≠オた違和感。
それは二人の男が瞬きする間もなく眼前の園庭に出現したことなのか。それとも女の側頭部に着けられた不気味な装飾品(能楽で使用される般若の面)による妖しさからなのか。否、女の艶やかな黒髪から生々しく生えでた、まるで鬼を連想させるような、金色に輝く二本の角がそのこと≠見る者が感じざるを得ない要因だった。
「ミサキ様、居らしてたんですね。ミサキ様はさておき…………大佐は……異界が現れて大変な時に悠長に月見酒ですか。あの子が異界の中に連れ去られたというのに」
楓は中っ腹な口調で大佐と呼んだ金髪の男を睨み付けた。
「楓ぇー、異界《マホロバーン》な。それにあの子のことは想定内やろ」
男は素っ気なく楓に返答すると煙草を取り出し火を点けた。
大佐の隣に端坐して二人の会話を聴く燕尾服の男が『ミサキ様』と呼ばれた人物らしい。眉をひそめて楓に訊く。
「……連れ去られた? もしや、それは楓さんがずっと目にかけている方相氏の少女のことですか?」
ミサキが楓に問いかけるやすぐに男が煙草の煙を勢いよく吐きつつ咳き込みながら声を荒げた。
「なに?! ま、まさか、あの、ちびっ子エクソシストのことか!」
交響楽団顔負けの秋虫達も何処へやら園庭中が水を打ったようになる。
「楓、そうなんか?」
「あ、あの…………」
口をつぐんだ楓の燃えるような赤い瞳は大佐の黄金色の瞳と交わり、彼女は着物の襟元を強く握りしめた。そして瞼をゆっくりと閉じて顎を引き、詫びるように頭を深々と下げた。
「おいおい! っていうか、どういうことや! オマエが見とったんちゃうんか! あれほど気い付けぇ言うとったやろ!」
大佐の叱咤に楓はうつむいたまま眉間に皺をよせ唇を噛んだ。
美しい顔が別れ話でも持ちかけられ、苦渋の決断を強いられた悲しげな女のような表情に変わる。
「ごめんなさい――――でも大佐に言われたくありません……」
今にも泣き出しそうな、泣いているような、か細い声が大佐の鼓膜に染み込んだ。
金髪の男は楓に投げた唾罵に罪悪感を隠せないのか、楓から視線を逸らす。
「ちっ……そんなシナリオあれへんぞ……ヤバイな」
男は苦虫を噛みつぶしたような表情でミサキに視線を移した。
「そうですね。これはかなりまずいことになりましたね」
ミサキは、茶碗の中の酒(般若湯)に映りゆらぐ満月をしばらく見つめた。
佇む楓の黒髪が夜風に揺らぎ、楓の膝が少しばかり震えているのを大佐は見逃さなかった。残暑厳しい下界に比べ高地に位置するこの場所は夜が更けるにつれて肌寒さを増す。が、楓が震えているのはこのためではないのだと理解している。
楓は懇願するような瞳でミサキに話しかける。
「……はい、ミサキ様。彼女以上に、あの子の霊力まで利用されれば……この世界が大変なことに――ミサキ様、どうか、あの中に入る方法をご存じではないですか?」
小さな溜息の後、やさしさのこもった表情を楓に向けるとミサキは平然と話し出した。
「そもそも、この物語には結末が用意されています。ですが、まさか、あの娘≠ェこちらに来ることは予定外でしたね。さて、助けにでもいくつもりなのですか? ――楓さん、並々ならぬ力の持つあなたをあのもの達がそうやすやすとマホロバーンの中に入れてはくれないでしょうね……しかし、そう心配しなくても、台本どおりであれば、あの二人がなんとかしてくれるでしょう。そうですよね大佐」
ミサキは口元を緩めて大佐の顔を眺めた。
楓も大佐に視線を移す。
「二人、それって、まさか?」
「ああ、うちのスピカと真田ちゆりやな。せやけど……」
男は舌打ちをしながらグラスに麦酒を注ぎ始めた。楓に対するミサキの温容。それにくらべ険しい顔立ちになっている自分を腹立たしく思う。
「まあ、楓さん、突っ立ってないで、こちらにお坐りなさい」
楓はミサキの手招きに素直に応じると大佐の隣に腰かけた。
微弱な空気の振動と物理的に縁側に伝わる振動、楓の動揺を大佐とミサキが感じとる。
金髪の男は深く煙草を吸い込んだ後に天を仰ぎ大袈裟に大きく紫煙を吐き出すと、楓に振り向き彼女の肩に優しく左手を置いた。
三人に僅かな静寂が過ぎ、楓の心と身体が凪ったことに金髪の男大佐≠ヘ安堵した。彼は今度こそ温かみのある声で楓に語りかけるよう努力した。
「楓、せやけど、ちびっ子はどうやって……こっちまで来れたんや?」
楓の赤い瞳の奥を覗き込むようにして訊いた。
「それが――マホロバーンが起こる少し前から、あの子の霊力を感知できない時がしばしばあったんです。結界というか、なにか別の力が働いているような。それと今朝方、あの子が何者かの車に乗せられた途端……」
口籠る楓。
「どうしたんや?」
「……そ、それが、なにもわからなくなって……どこに連れて行かれたのかも……なにも。心当たりを捜してもみました。でも、どこにも、気配すらなにも――――もしかと思って奈良まで来てみたら微かにですがマホロバーンの中から彼女の霊力を感じました」
男は楓の瞳から静かに目を離し、煙草の煙を月に吹きかけ夜空に視線を走らせて、ため息まじりに小声でごちた。
「……まさか……あいつらか」
男の呟きを聴くなり楓は驚いたように立ち上がる。
「大佐! 心当たりが!」
「…………」
男は楓に何も答えず、夜空を見上げたまま、自らの口から溢れ出た煙草の煙を肺深く吸い込んだ。
「――煌御門――」
ミサキが秋虫の奏でに溶け込むような声で囁いた。
大和まほろば奇鬼妖神 煌御門の陰謀【第三章 監視する女と監視される女】より抜粋(編纂)
コンクリートを多用した近代建築物が立ち並ぶこの国で最も人口の多い大都市の中に、壮大華麗な旧世紀のデザインを髣髴させる洋風建築の駅舎前の歩道に一風変わった服装の少女が一人地団駄を踏んでいた。
「やーっと着いたでー。よし、ほんなら今すぐ新幹線に乗って奈良まで大急ぎやで! ってウチ、お金、四八五円しか持ってへんやーん! 前鬼ぃー、どうしたらええんや」
少女の独り言か。
「ピコピコピコピコ」
少女が肩から下げたカバンの中から猫のような赤いヌイグルミが顔を覗かせている。そのヌイグルミからコンピュータ音らしきものが少女に話しかけているかのように鳴っている。
「ほぇ、ヒッチハイクやて。それか、車を拝借して奈良まで行くと。ふむふむ。そうかその手があったか! ってか、ウチ車の免許持ってへんや〜ん」
今現在、奈良県で発生している異常現象のため西日本に向かう鉄道はすべて運行を停止している。そのせいか駅舎前には普段以上に右往左往する人だかりができ、あちらこちらで警官による誘導作業が行われている。また駅舎に続く車道には交通規制のため警察車両以外の民間車両は一台も見当たらない。
そこに一台の黒い高級車が乗り入れられた。不思議なことに警官の誰一人としてその車に気付いていない。運転席が開き、その中から長身に赤いスーツ姿の女性が降り立った。すかさずコスプレ少女に歩み寄る。
「失礼、如月ついなさん?」
「ほぇ、おねぇはん誰や?」
「私、こういうものです」
見るからに高価なハンドバッグから名刺を取り出しコスプレ少女に手渡した。
「うーん、なんて読むんや? 煌、御、門? こーもん?」
「ちがいます。煌御門と読みます」
「ああ……そうなんか。でもなんでウチのこと知ってるん?」
「私たち行者の世界では、美少女方相氏といえばあなたついな≠ウんは有名だもの」
「ほんまか〜。って、おねぇはんも方相氏なんか?」
「ま、まあ、そうね。それはさておき異常現象の起きている奈良県に行きたいんじゃなくて」
「ええ〜、なんで知ってるん」
「私達はあなたの味方だもの。なんでも知ってるわ。私が送ってあげるわ」
「ほんま! ほんまにええんか、ウチもどうしたらええか迷とったんや。ほんなら善は急げや! たのむで」
コスプレ少女にはどうも警戒心というものが欠落しているようである。
壮大華麗な駅舎から遠く離れた高層ビルの屋上に長身のライフル銃を構えたカーキー色のアーミージャケットを女子高校の制服に羽織った青髪の少女がフェンスすらない建物の末端部、人間が落下すれば確実に死に値する恐怖の為に失神してしまいそうな場所、少女はそれ≠ノ微塵も臆していないのか、時折吹く強めの風に薄手のアーミージャケットと制服のスカートがなびくもバランスを失いかけることなく華奢な体は微動だにせず静かに立っていた。
眼下に広がる街並みの遥か遠く、その瞳の奥に映るのは壮大華麗な駅舎の前に居る赤いスーツ姿の女、それ≠ノライフルの銃口を固定させて凝視している。
夏の日差しが残る今の季節は午前中といえども高層ビルの窓ガラスに反射した陽光が少女を照り付け、露わになった素肌を焼くほどに暑い。が、少女は汗一つ掻いてはいない。
不思議なのは少女の様相以上に目の前には数々のビルが立ち並び、少女が視認しているはずの駅舎などは全く見えていない。
しかし彼女の網膜には、はっきりと駅舎前の群集と赤いスーツの女とコスプレ少女が映っていた。
「こちら姫神美弥、標的までの距離二〇〇〇、煌御門の長女は、変なコスプレ少女と接触」
少女が立つ高層ビルから少し離れた商業施設のパーキングに駐車された長距離用大型トラックのボディ内部、そこに設けられた様々な電子機器類に囲まれた中で、ありきたりの缶コーヒーを片手に煙草をふかしながら、モニターを覗き込む女が少女の声(通信)を聴いていた。
「コスプレ少女? 誰だ、そいつは?」
女の見るモニターには青髪の少女が装着している無線式カメラゴーグルからの送信映像が映し出されていたが、姫神美弥が見ているそれ≠ナは無く、ただ立ち並ぶ高層ビル群であった。
「姫神、オマエの画をまわせ」
そう女が言うと、モニターに映し出されているビル群の画像が、数十秒、裸眼で海中にでもいるかのようにぼんやりと、そして上下左右に揺らいで見えた後、ぱっと画像が切り替わり、駅舎前の雑踏の中に居る赤いスーツの女と珍妙なコスプレ少女が映し出された。
青髪の少女が装着しているゴーグルは特殊な魔法技術の賜物で彼女の魔術回路に同調することで彼女自身が見えているものを映像として具現化できるように作られている。またそれは彼女だけが持つ特異能力である千里眼にのみ反応する魔法術式が施されているためほぼ彼女専用といってよい。
そして今、障害物を透して見えるはずもないものが拡大までされてモニターには映っている。これも姫神美弥が持つ千里眼(透視能力)の一能力にしかすぎない。
(……誰だ、この娘は……)
「誰だ? こいつは?」
女は訝しげな表情でモニターに被りつきながら少女・姫神美弥に訊いた。と、すぐにモニターの画像はマクロフォディアで見ていたものから実際に見えている元のビル群に変わった。
屋上に立つ少女は、五体を微動だにせず、エメラルドの瞳だけををちらりと左側に動かすと通信相手の女に報告を続ける。
「さあ。大佐からの指示は煌御門愛綺羅をマークするだけ。イレギュラーの存在に関しての対処は聞いてない。それと……」
『どうした? なんだ?』
少女のエメラルドに輝く瞳は、はるか遠くのビルの屋上にある米粒ほどの黒い人型を見ている。肉眼ではそれが人なのかどうかも定かではないのに。少女には人に見えるのだろうか?
「十一時の方向、一七〇〇メートル先のビルの屋上に誰≠ゥいる」
『確認できるか?』
一七〇〇メートル? 姫神美弥はたしかにそう言った。肉眼で見えているそんなに離れたモノの距離が目測で解るものなのだろうか。だが解ってしまうこと、それもまた彼女に与えられた能力の一つなのである。
少女は眉間に力を込めて意識を集中させるとまるでズームレンズの拡大倍率を上げたように目標物の姿が鮮明に少女の視界に映し出された。
「……人間じゃない……少し妖気を感じる。それに同じ標的を見ているよう」
『人間じゃない?』
「真っ赤な着物姿……角……妖鬼。――――」
少女の見つめるビルの屋上に居るのは紛れもなく人の形を成した異形の存在であった。
『妖鬼だと?』
「撃ち殺そうか?」
『いや、待て……様子見でいい』
「了解した」
青髪の少女、姫神美弥は妖鬼≠ゥら所定のターゲットに視線を躊躇なく戻す。
どういう妖魔なのか、その素性に興味は無い。ただ、少女は自分自身の存在にすら気づかないでいる人外のモノ≠ノ脅威を感じる必要はないと判断したからだ。いつでもそれ≠消滅させられるという少女自身の能力の高さの表れでもある。
その時、ターゲットに動きがあった。
「コスプレ少女が煌御門の車に乗った」
刹那!
姫神美弥の目の前の空間が歪み、眩い光に包まれた。
「――――!!!」
『ウッ!』
同じくすぐに通信相手の女が呻いた! 眼前のモニターが強烈な光を放ち、画面に無数のひび割れが走り砕け散る。
屋上で狙いを定める青髪の少女が一瞬目を閉じ、すぐさま眼を凝らしつつターゲットの索敵を行ったが、壮大華麗な駅舎の前に赤いスーツの女とコスプレ少女の姿はなく。烏合の衆だけが何ら変わりなく時を刻んでいた。
「目標をロスト。――――やられた。隠匿術式魔法を使われた」
通信を聴いた女は双眸を左手で押さえながら片方の指先に挟んでいた煙草を床に投げつけた。
『くそっ! ……妖鬼はどうなった?』
少女ははるか向こうの屋上に佇む妖鬼に視線とライフルの銃口を移し意識を集中させる。
「アレ≠熏Qててる。たぶん目標を見失っているみたい」
『すぐに、大佐に連絡を! 対象外の人物が。――――連絡? ……姫神!』
「聞こえてる」
『私は、今なんと言った?』
「スレイハイドのせい。――――大佐には、おそらく連絡できない」
『そうだ! 大佐に報告を!』
「きっと今は無理」
『煌御門の報告を!』
「なんて報告する」
『……見失った?』
「そう。それだけ」
少女は抑揚のない声で答える。
女はなかば威圧的に訊き返す。
『……どういうことだ?』
「今はそれだけ…………通信記録は?」
『確認する』
女は、迷彩BDU姿の数人のオペレーター達の背中越しから声高に通信記録の詳細を要求した。
「大和二尉、バックアップデータは二〇分前の交信通話音声とゴーグル映像記録だけです」
一人の女性オペレーターが不可解な面持ちで背後の女に向き直って告げた。
「そんなはずはないだろ! もう一度確認しろ!」
――――――――女の要求もむなしく、データに残るもの≠ヘそれだけであった。
(――――やつ≠ヘそこで何をしていた?)
女の自問自答。
煌御門愛綺羅が大通りから駅舎のロータリーに車を乗り入れたことについては認識している。姫神美弥が見ていた光景、それを受信したモニター映像の確認もできている。しかしなぜ? その場所に来たのか、そこでなにをしていたのかを理解することができない。そう、知っているようで思い出せない。
煌御門愛綺羅による隠匿術式魔法の影響で、姫神美弥、大和マヤ二等陸尉及びトラックのボディ内部に居る関係者は、煌御門の長女が接触した謎のコスプレ少女のことを全く覚えてはいなかった。
通信機のイヤホンから垂れ流される司令塔である女の慌てふためいた怒りと苛立ちを含んだ声にうんざりしている少女には事象≠フ原因についての確信があった。だがそんなことはもうどうでもいい、少女のエメラルドの瞳が捉えているものは赤い着物姿の妖魔。
『妖鬼はどうする?』
トラックのボディ内に殺意に満ちた冷ややかな青髪の少女の声が響く。それを聴いたすべての者≠ェ凍りついた。
背筋に悪寒を覚えつつ、我に返った女が命令した。
「撃て」
と。
少女は引き鉄を引いた。
銃口から飛び出した高速の光輝く銃弾は屋上の妖鬼を掠ることなく空を切った。
「消えた……か」
姫神美弥が引き鉄を引いた瞬間に屋上に居るはずの妖鬼の姿はもうそこには無かった。
大和まほろば奇鬼妖神 煌御門の陰謀【エピローグ】より抜粋
「世界は一つではありませんよ。権力者にとっては並行世界が必要とされる場合があるのです。六十年周期に起こる災厄の日、ダイサンアクネの復活、今回は彼≠ェこの世に生を受けてしまいました。それはあまりにも強大な力の為に、今あるこの世界の崩壊を招く恐れがある。それを防ぐ為にはもう一つの世界に彼≠閉じ込めておく必要がある。まあ、理不尽ではありますが。それが、その最も合理的な方法が、マホロバーンなのです。また、それの媒体となるモノの存在にも、この法則≠ヘ当てはまりますが。そして、それが今ここに存在している人間達の総意によるものですからね」
「じゃあ、マホロバーンの中の人達はどうなっちゃうの?」
「まあ、もう一つの世界が出来上がっているわけですから、そちらで生きていくしかないでしょうね。あっ、ちなみにですが、別にマホロバーンの中に居る人達だけとは限りませんよ」
と、ミサキは少女に微笑みかけ、背中に付いた黒い大きな羽根を折りたたむように前身に廻すと彼女をやさしく包み込んだ。