時間 | セリフNo. | 人物 | セリフ | 備考 |
(BGM) | (「Magna」開始〜終了) | |||
(BGM) | (「水鏡」開始) | |||
0:00 | 1-1 | ミサキ | 再び登場の熊野娘道譚の ストーリーテラー? とでも 言いましょうか、 「ヤタ・ミサキ」です。 さて、熊野娘道譚の主人公 「藤代すみれ」とは縁ある スピカさんの学園冒険活劇の司会を務めさせていただきますので どうぞよろしくお願いいたします。 それでは、只今より《大和まほろば奇鬼妖神 人狼の里 編》 開幕にございます。 | |
1-2 | [ちゆり] | 私の名前は真田ちゆり、 聖バレンシア女子学院に通う 普通の女子高校生、じゃないわね。 ちょっと不思議な力を持った 少女って設定です。 まあ、それはさておき、 今回のお話の主役は、 残念だけど私でもスピカでもないのよね。 私的には、S・ブラッドストーン、通称ブラッディの秘密が 明らかにされるってところからして、 ブラッディなんじゃないかしら (笑) | ||
(BGM) | (「水鏡」終了) | |||
(ジングル) | (「Runaway」) | |||
1-3 | ミサキ | 《第一章 十三日の金曜日》 ここは、聖バレンシア女子学院の中、 何年生なのかは設定されて いませんが、A組の教室内、 四時間目の授業が終わり、 ここから物語は始まるのです。 | ||
(ジングル) | (「Fight oh!!」) | |||
(SE) | ――♪キンコンカンコーン | |||
(BGM) | (「カラフルリボン」開始) | |||
1-4 | 女教師 | はい、今日の授業はここまでです。 それでは皆さん、 午後からの専門課程の授業は ありませんので、 お昼ごはんを食べたら、 各班に分かれて、 イベントの設営準備に勤しむように。 それじゃ学級委員長のつくねさん、後は頼みますね。 | ||
1-5 | つくね | 了解です。――起立! 先生に注目! 礼! | ||
1-6 | 生徒全員 | ありがとうございました。 | ||
1-7 | つくね | それじゃーみんな、 待ちに待ってました、 聖バレンシア女子学院 恒例イベント、 お月見ナイトは今夜やけん、 盛り上がっていくばーい! | ||
1-8 | 生徒全員 | イェーイ。 | ||
1-9 | 生徒A | だけど、委員長、 今日は、13日の金曜日だからなんかヤバくない? (笑) | ||
1-10 | 生徒B | (笑) ジェイソンとか、現れたりして。 | ||
1-11 | つくね | ほんに、今年の中秋の名月はスリルのある日付になったばい。 せやから、よけいにテンション上がるバイ! | ||
1-12 | 生徒全員 | (笑) | ||
1-13 | [ちゆり] | (笑) ってわけで、今夜はいろいろと盛り上がりそうね (笑) そして、私たちは設営準備のために 班ごとに分かれて行動することになりました。 | ||
1-14 | スピカ | なあなあ、つくねー。 | ||
1-15 | つくね | なんや? スピカ? | ||
1-16 | スピカ | ボクの班ってさ、ちゆりの他に誰が居んの? | ||
1-17 | つくね | あっ、そうか。 スピカとちゆりは、班決めの時、スペインに行ってたんやな。 | ||
1-18 | スピカ | だね。 | ||
1-19 | つくね | B組のブラッディと C組に転校してきてた クロエちゃんやな。 | ||
1-20 | スピカ | えっ? 四人だけなの? | ||
1-21 | つくね | ウチが知ってるのはそんだけやけど。 あと何人かはおるやろな。 せや、スピカらは、校庭の設置準備やなくて、 自然庭園のゴミ拾いやで (笑) | ||
1-22 | スピカ | はぁ〜? なんでボクたちだけ掃除係なんだよ! | ||
1-23 | つくね | 学校、休んでたからな。 みんなが嫌がる、余り物しかなかったんやけど (笑) | ||
1-24 | スピカ | ……マジかよ。 | ||
1-25 | [ちゆり] | まあ、仕方がない結果なんですけど (笑) そして、昼食の後、私は不貞腐れるスピカを連れて 学院内にある自然庭園に向かうことにしました。 | ||
(BGM) | (「カラフルリボン」終了) | |||
1-26 | ナレーターA | 【場所は変わって自然庭園にて】 | ||
(BGM) | (「お出かけ日和」開始) | |||
1-27 | スピカ | あっ、ソフィーらも居んじゃんか。 | ||
1-28 | ブラッディ | おっ、スピカたちが来た来た。 | ||
1-29 | スピカ | ジーク・ジオン! | ||
1-30 | ちゆり | みんな、お待たせ。 | ||
1-31 | ブラッディ | これで全員だね。 それじゃ、二人一組に分かれて、ちゃっちゃと済ませるか。 とりあえず、アタシとクロエは滝の周りの遊歩道、 咲希といよのボインコンビは、噴水と藤棚の周りな。 | ||
1-32 | 咲希 | ラジャー! | ||
1-33 | いよ | わかった…… けど、ボインって、ブラッディには言われたくないな…… | ||
1-34 | ブラッディ | んで、ソフィーと美弥のスナイパーコンビは 森の遊歩道を頼むよ。 | ||
1-35 | ソフィー | All right! | ||
1-36 | 美弥 | 了解した。 | ||
1-37 | ブラッディ | で、スピカとちゆりっと。 | ||
1-38 | スピカ | Ok! かしこまりジュリアーノ〜。 | ||
1-39 | ちゆり | りょうかーい。 | ||
1-40 | ブラッディ | それじゃ、始めようか。 スピカたちは滝の所から川岸を下って行ってくれ。 | ||
1-41 | スピカ | おっ、ラッキー! | ||
1-42 | [ちゆり] | なぜ、スピカが『ラッキー』って言ったのか、 実は、この聖バレンシア女子学院にある自然庭園は 人工的に作られた物ではなくて、 ある種の魔法技術を用いた現実空間なの。 って、解りやすくいうと、 人も踏み入らない山奥の実際にある場所の一部分を 空間ごと切り取って学院内に移植してあるんです。 まあ、それは普通の生徒や先生が知らないことなんですけどね。 だから、きっとスピカ的には、 山奥の川沿いだから涼しいって思ったんじゃないかしら。 私も、そのはずだったんだけど、さんさんと照りつける太陽が、 川面に反射して眩しいくらいの川岸を、 上流から下流に向かって歩いていました。 | ||
(BGM) | (「お出かけ日和」終了) | |||
(SE) | (川辺の音 開始) | |||
1-43 | スピカ | 暑いな〜、カンカン照りじゃんか。 なあ、ちゆりー、 こんな山奥の川にゴミなんて あるわけないじゃん。 | ||
1-44 | ちゆり | ほんと暑いわね。 これじゃ遊歩道の方が木陰もあってよかったかもね (笑) ――ってスピカ、あれっ!? | ||
1-45 | スピカ | うん? あれって? | ||
1-46 | [ちゆり] | 私たちの十メートルほど先に! 見つけたくないモノが目に入ったのです。 そして思ったとおりのモノが川岸にありました。 ――それは、白い体毛をびっしょりと濡らし横たわる、 二匹の小型犬だったのです。 | ||
(BGM) | (「華舞」開始) | |||
1-47 | スピカ | ……犬の死体か。 | ||
1-48 | ちゆり | ……かわいそう。 | ||
1-49 | スピカ | たぶん、上流から流されてきた野犬の子供だな。 | ||
1-50 | ちゆり | どうしよう、スピカ。 | ||
1-51 | スピカ | このままにはしとけないし、 もう一度、川に流すしかないだろ。 | ||
1-52 | ちゆり | えっ? 埋めてあげないの。 | ||
1-53 | スピカ | 埋めるったってなー。 | ||
1-54 | ちゆり | 川に流すのなんてかわいそうよ。 | ||
1-55 | スピカ | かわいそうって、もう死んでんだしなー。 | ||
1-56 | [ちゆり] | 私はスピカの言うことを聞かずに この子たちを埋めてあげようと思い、 小さい方の一匹を抱き抱えました。 | ||
1-57 | スピカ | おいおい、ちゆり、なにしてんだよ! | ||
1-58 | ちゆり | ……だって……。 ――って、スピカ! この子、まだ生きてるわよ! | ||
1-59 | スピカ | !? マジか? こっちのは? こいつも少しだけど心臓は動いてるっぽい! | ||
1-60 | ちゆり | でも全然動かない! どうしよう! スピカ!? | ||
1-61 | スピカ | ……クロエだ! あいつならなんとかできるんじゃないか! | ||
1-62 | [ちゆり] | そして、私とスピカは二匹の犬を抱き抱えて クロエの所まで一目散に走りました。 | ||
(BGM) | (「華舞」終了) | |||
(SE) | (川辺の音 終了) | |||
1-63 | ナレーターA | 【場所は変わって 滝の周りの遊歩道にて】 | ||
(BGM) | (「危機的状況」開始) | |||
1-64 | スピカ | おーい! クロエー! | ||
1-65 | ブラッディ | あ〜? なんだあいつら? | ||
1-66 | スピカ | ブラッディ、クロエは? | ||
1-67 | ブラッディ | って、スピカ! なに抱えてんのよ?! | ||
1-68 | スピカ | 見りゃわかんだろ、クロエは? | ||
1-69 | ちゆり | はぁーはぁー、クロエはどこ? | ||
1-70 | ブラッディ | って、おいおい、ちゆりまで。 | ||
1-71 | クロエ | どうしたの、スピカ? | ||
1-72 | スピカ | あっ、クロエ! この犬、動かないんだ、死にかけてんだよ! ヒールできないか! | ||
1-73 | ちゆり | お願い! クロエ! | ||
1-74 | クロエ | ……あっ、ほんとだ、この子ら、死にかけてるね。 ヒールはべつにできるけど―― スピカ……これ犬じゃないよ。 | ||
1-75 | スピカ | はぁ? | ||
1-76 | クロエ | この子たち、犬じゃなくて、オオカミよ。 それに普通のオオカミじゃない。 | ||
1-77 | スピカ ちゆり ブラッディ | オオカミ!? | ||
(BGM) | (「危機的状況」終了) | |||
(BGM) | (「クレマチス」開始) | |||
1-78 | [ちゆり] | 驚いている私たちを他所目に クロエが二匹のお腹を摩ると 前足と後ろ足をバタつかせたあと、 閉じられていた目が スッと開きました。 | ||
1-79 | ブラッディ | おっ、生き返った。 | ||
1-80 | [ちゆり] | スピカに抱かれていた子が激しく暴れて地面に降り立つと、 何かを探しているような素振りでくるくるとその場を回り、 私の胸に抱かれた子犬を見つけると、 私に向かって威嚇の姿勢を取りました。 | ||
1-81 | スピカ | 痛ってーなコイツ! | ||
1-82 | ちゆり | 大丈夫よ、大丈夫だから。 今、この子を下ろしてあげるから。 さあ、お母さんの所に行って…… | ||
1-83 | ブラッディ | こいつら親子か? | ||
1-84 | スピカ | ……兄弟なんじゃね | ||
1-85 | [ちゆり] | 二匹は縺れ合うように身を寄せてその場に蹲ると、 怯えたような目で私たちを交互に見つめました。 | ||
1-86 | ブラッディ | なあ、クロエ? あんたさっきオオカミ? って言ったよね? | ||
1-87 | クロエ | うん。この子たち、犬じゃなくて…… オオカミはオオカミだけど、 人狼の子供だよ。 | ||
1-88 | スピカ ちゆり ブラッディ | 人狼!! | ||
1-89 | クロエ | そう。さっき力を回復させたから、 人間の姿になれるはずなんだけど…… 人の形にしよっか? | ||
1-90 | ブラッディ | んなこと、できるのか? | ||
1-91 | クロエ | できるよ―― ピピルマ、ピピルマ、プリリンパ、 パパレホ、パパレホ、ドレミンパ、 オオカミよ、人間になぁーれ。 | ||
1-92 | [ちゆり] | 著作権と使用権を無視したクロエの呪文で 二匹が二人の人間の子供の姿になりました。 | ||
1-93 | ブラッディ | 今のセリフ、大丈夫か? | ||
1-94 | スピカ | ピー入れとけば、いんじゃね。 | ||
1-95 | [ちゆり] | こうして人間の姿になった二人に事情を訊いた私たちの…… さぶらいぶぺが生アフレコ用の物語が始まるのです。 | ||
(BGM) | (「クレマチス」終了) | |||
(ジングル) | (「Runaway」) | |||
2-1 | ミサキ | さてさて、彼女たちに平穏という 言葉は似合わないようですね。 それでは 《第二章 オオカミの姉弟》 に参りましょう。 | ||
(ジングル) | (「Fight oh!!」) | |||
(BGM) | (「夢見の夜」開始) | |||
2-2 | [ブラッディ] | スピカたちが拾ってきたオオカミの 子供は人狼の姉弟だった。 クロエが、二匹を人間の姿にしてから、 アタシらはこの子たち、 人狼の話を聞くことにしたんだ。 どうやら、お姉ちゃんオオカミは 人間の年齢に見立てると十歳くらいか、 弟オオカミ君は五歳くらいみたいだった。 なぜだか知らないけど、 お姉ちゃんオオカミが、私を凝視してるんだ。 あちゃー……なんかめんどくさいことになりそうだな…… | ||
2-3 | スピカ | おまえら、どうしてあんな所で死にかけてたんだ? | ||
2-4 | ちゆり | ちょっと、スピカ。 | ||
2-5 | ブラッディ | なあ、お姉ちゃんオオカミ、 ずっとアタシを見てるけど、 アタシになんか付いてるか? | ||
2-6 | ちゆり | ブラッディも。 | ||
2-7 | クロエ | 大丈夫、あたしたちは人間じゃないよ。 | ||
2-8 | [ブラッディ] | クロエは、オオカミの姉弟に そう言うと、 人間の姿から山猫の姿に 変化して見せた。 | ||
2-9 | 人狼姉 | ! 化け猫…… | ||
2-10 | ちゆり | そうよ。だから安心して。 | ||
2-11 | 人狼姉 | ……そしたら、そこの赤い髪の女が化け猫の女王なのか。 | ||
2-12 | ブラッディ | アタシのことか? | ||
2-13 | 人狼姉 | ……なにか怖いくらいの、ものすごい妖力を感じる。 | ||
2-14 | ブラッディ | (笑) 女王か、嬉しいけど、化け猫じゃないよ。 アタシは魔族なんだ。 | ||
2-15 | スピカ | (笑) たしかに、女王様っぽいよな (笑) | ||
2-16 | 人狼姉 | 魔族の女王……そ、そうか。 そして緑の帽子の、おまえからは山神さまの匂いがする。 | ||
2-17 | スピカ | ボクかい? | ||
2-18 | 人狼姉 | そう。 | ||
2-19 | スピカ | う〜ん? ……なんとなく解るな、ダタラッチのせいか。 ――オホン! よくわかったな、オオカミの子供よ。 我は山神の化身、すべてを打ち明けるとよいぞ! | ||
2-20 | ちゆり | ちょっとスピカ! 何バカなこと言ってんのよ。 | ||
2-21 | 人狼弟 | それじゃあ、お姉ちゃんは女神さまなの。 | ||
2-22 | ちゆり | えっ? わたし? | ||
2-23 | 人狼弟 | うん。お姉ちゃんに抱かれてるとき、 すごくいい匂いがして、温かくて気持ちがよかった。 | ||
2-24 | ちゆり | え、えーと、そ、そ、そうね私は女神の中の女神よ。 あなたたち姉弟を助けるために来たんだから。 | ||
2-25 | スピカ | (笑) なんだそれ (笑) | ||
2-26 | ブラッディ | ……アンタらねー。 | ||
(BGM) | (「夢見の夜」終了) | |||
(BGM) | (「モノクロの夢」開始) | |||
2-27 | 人狼姉 | お願い、神様! 姉さまを助けて! 一緒に人狼の里に来て! | ||
2-28 | ブラッディ スピカ ちゆり (クロエ) | あねさま?(にゃぁ?) | ||
2-29 | [ブラッディ] | どうやら姉弟の話では 満月の日に《婚礼の儀》が執り行なわれるらしく、 姉弟の姉さまが無理やり結婚させられようとしているらしい。 そして一族に無理やり連れ去られた。 姉弟は姉さまの結婚を止めさせたいと 人狼の里のお婆に相談したそうだ。 お婆が言うには川下にある 人間が作った《古の庭園》という場所に行けば 助けがあると占いに出たそうで、 姉弟は何日もかけて川を下ってきたらしいが、 途中で弟君が川に落ちて 助けに入ったお姉ちゃんもどうやら溺れて ここまで流されたようだね。 | ||
2-30 | ナレーターB | ☆ 小説では詳しく、プロローグにて | ||
2-31 | ちゆり | スピカ、助けてあげましょう。 | ||
2-32 | スピカ | 助けるっていってもなー。 子供の話だし、あちらの事情にそんな簡単に 首つっこんでいいものかどうか。 | ||
2-33 | 人狼姉 | お願いです。 山神さま、姉さまを助けてください。 姉さまには好きな、ジェイソン兄ちゃんがいるんです! | ||
2-34 | スピカ | ジェイソン兄ちゃん? | ||
2-35 | 人狼姉 | はい。姉さまはジェイソン兄ちゃんと結婚したいんです。 | ||
2-36 | ブラッディ | ちょっと待った。 それじゃあ、姉さまってのは、誰と結婚するんだ? | ||
2-37 | 人狼姉 | 知らないけど、ジェイソン兄ちゃんじゃなくて、 外国から来たオオカミ王の子供って言ってました。 | ||
2-38 | ちゆり | ……ブラッディ、もしかして、 これって、よくある政略結婚なんじゃないの? | ||
2-39 | ブラッディ | なんか、それっぽいな。 | ||
2-40 | スピカ | マンガかよ。やめやめ、 そんなんに首突っ込んだら、 ヤバいって。 | ||
2-41 | ちゆり | スピカ。 | ||
2-42 | ブラッディ | なあ、お姉ちゃん、 そのジェイソン兄ちゃんってのは、どこにいるんだ? | ||
2-43 | 人狼姉 | 人間の街です。 | ||
2-44 | ブラッディ | 人間の街? それって、人間として街で暮らしてるってことなのか? | ||
2-45 | ナレーターB | ☆ ちゆりの膝の上でおとなしくしていた人狼の弟が ちゆりの顔を見上げてにっこりと笑った。 | ||
2-46 | 人狼弟 | 人間なんだ。 | ||
2-47 | ちゆり | えっ? 人間? | ||
2-48 | ブラッディ | 人間って。 | ||
2-49 | スピカ | でたでた。ほら、めっちゃヤバい展開じゃん。 人間とオオカミ女のロマンスだろ? 無理無理、ぜったい不幸になるだけだって。 | ||
2-50 | ちゆり | スピカ! | ||
2-51 | ナレーターB | ☆ ちゆりに怒鳴られたスピカはブラッディを見た。 そして自身の発した言葉の重大性に後悔した。 | ||
2-52 | スピカ | あっ、ごめん…… | ||
2-53 | ブラッディ | 気にしてないよ、スピカ。 たしかに応援しがたいってのは正直なところだけど…… なんでかな……アタシが魔族と人間の混血だからかな、 この子らの力になりたいって……思うんだよ。 | ||
2-54 | ちゆり | ブラッディ。 | ||
(BGM) | (「モノクロの夢」終了) | |||
(BGM) | (「Sunrise」開始) | |||
2-55 | スピカ | ……うなぁぁー! わかったよ! しゃーねぇなー、おまえら、 ボクらがなんとかしてやるよ…… って、また大佐に怒られそうだけど。 | ||
2-56 | ブラッディ ちゆり | スピカ。 | ||
2-57 | 人狼姉 | ほんと! ありがとう、神様! | ||
2-58 | スピカ | おい、クロエ、どうする? | ||
2-59 | ナレーターB | ☆ スピカに訊かれた山猫の姿だったクロエが 一瞬で人間の姿に戻る。 | ||
2-60 | クロエ | 面白そうだから、やってみるのもいいかも。 | ||
2-61 | スピカ | まあ、ネコ神さまが言うんじゃ、やるっきゃないよな。 決まりだな。 で、どうする? | ||
2-62 | ナレーターB | ☆ クロエが行き止まりのはずの 小さな滝を指さした。 | ||
2-63 | クロエ | このまま川を上って行けば、 そう時間もかからずに人狼の里に着くよ。 | ||
2-64 | スピカ | いやいや、そりゃ無理だろう。 こいつら、ここに来るまで何日もかかったんだろ。 それに、ここ一応行き止まりみたいに作ってあるし、 結界の向こうには行けないじゃん。 | ||
2-65 | クロエ | 大丈夫だよ。 この子たちはただオオカミ側が作った 特殊結界の中を彷徨ってただけだし。 川に落ちた時点でそれが解消されただけ。 あたしにも学院側のこの強力な結界は破れないけど、 ブラッディの魔法なら大丈夫だと思う。 | ||
2-66 | ブラッディ | アタシの魔法が? | ||
2-67 | クロエ | この結界には、魔族の力が大きく関与してる。 おそらく作ったのは人間の魔法使いが知ってる術式じゃない。 古の魔族だと思う。 ブラッディの術式にはそれに該当する悪魔文字が 多数あるのは知ってたから、きっと大丈夫。 | ||
2-68 | スピカ | クロエ、おまえって、なんでも知ってんだな。 | ||
2-69 | クロエ | そんなことない、知ってることだけ。 | ||
2-70 | スピカ | んじゃ、今から行きますか。 | ||
2-71 | ちゆり | 今からって、準備とかいろいろしないと。 | ||
2-72 | スピカ | 軍人たるもの、緊急出動なんて当たり前じゃん。 | ||
2-73 | ちゆり | 私は軍人じゃないし、それに学校はどうするのよ。 | ||
2-74 | スピカ | まあまあ。 なあ、クロエ、おまえなら時間修正はできるんだろ? | ||
2-75 | クロエ | できる。 そもそもこの学院自体が特殊な結界の中にある。 通常世界の時間軸とは別の存在だから全然可能。 人間には無理だけどあたしなら可能。 | ||
2-76 | スピカ | ほらな。 | ||
2-77 | ちゆり | だったら、用意してからでも遅くないじゃない。 | ||
2-78 | ブラッディ | そうだよスピカ、 作戦を立てて、みんなにも協力してもらおう。 | ||
2-79 | スピカ | ノンノンノン。 二人ともわかってないなー。 | ||
2-80 | ちゆり ブラッディ | なにが? | ||
(BGM) | (「Sunrise」終了) | |||
(BGM) | (「Steep Out」開始) | |||
2-81 | ナレーターB | ☆ スピカは左手首に巻かれた 大き目のミリタリーウォッチを チラッと見ると、 右の掌で庇を作るようにして、 真上の太陽を仰ぎ見た。 | ||
2-82 | スピカ | 14時半か…… ブラッディ、気づいてないか? | ||
2-83 | ブラッディ | なにが? | ||
2-84 | スピカ | 太陽の位置だよ。 こいつらを見つけてからの、この一時間あまり、 太陽が動いてない。 というか動いてはいるんだけど、 一時間前の高さのままなんだ。 | ||
2-85 | ブラッディ | えっ? どういうことスピカ? | ||
2-86 | スピカ | こいつらを見つけた時点で、ボクらの時間軸が こいつらの世界の時間軸に切り替わってるんだよ。 まあ、解りやすくいえばすでに平行世界にいるってことさ。 だよな、クロエ? | ||
2-87 | クロエ | そうなる。 もとの時間軸の世界に戻ることも可能だけど、 人狼たちとは会わなかったことになる。 スピカたちの場合は普通の人間じゃないから 記憶は残るかもしれないけど保障はできない。 | ||
2-88 | スピカ | で、今日は何日だと思う、ちゆり? | ||
2-89 | ちゆり | 13日の金曜日、じゃないの? | ||
2-90 | スピカ | だったら余裕もあったんだろうけど、 太陽の高さからすると、たぶん次の日の14日の土曜日、 オオカミたちの好む、ほんとの満月が上る日だと思う。 ってことは、もう、時間がないってことだよ。 | ||
2-91 | ちゆり | それじゃ、スピカ、私たちは未来にいるってことなの? | ||
2-92 | スピカ | に、なるのかな? クロエ? | ||
2-93 | クロエ | そうとは言えないし、そうとも言える。 | ||
2-94 | ブラッディ | ならアタシたちが昨日に戻って、 もし今の記憶が残っていたら、 そっちの方が都合がいいんじゃないのか? | ||
2-95 | クロエ | だから保障できない。 | ||
2-96 | ブラッディ | クロエが覚えていたらいいんじゃないのか? | ||
2-97 | クロエ | それもどうなるか解らない。 | ||
2-98 | スピカ | なっ、だから今からやるんだよ。 | ||
2-99 | ちゆり | ねえ、クロエ、質問なんだけど、 アニメとかであるじゃない、 昨日に戻って、未来の自分たちを 陰から助けるみたいな、こともできるの? | ||
2-100 | スピカ | ちゆりってば、ま〜た、面白がってんな。 | ||
2-101 | ちゆり | 違うわよ! 失敗しないようによ! | ||
2-102 | クロエ | ちゆり、アニメじゃないから、それは無理かも。 同一世界、同じ時間軸の中では記憶を共有できる 複数個体の存在は許されないから、 肉体としては存在できても目的意識は別のものになる。 | ||
2-103 | ブラッディ | もし、アタシらに会えても、意味を成さないってことか? | ||
2-104 | クロエ | おそらく、会えない。そんな話はアニメだけ。 | ||
2-105 | ちゆり | それじゃ、明日の、じゃない 今日の時間の私たちはどうしてるのよ? | ||
2-106 | クロエ | ここ、この時間にいる。 | ||
2-107 | ちゆり | どういうこと? パッと消えてたりするの。 | ||
2-108 | クロエ | 消えない。今が明日だから。 | ||
2-109 | ブラッディ | 訳が解らん。 | ||
2-110 | スピカ | って、ちゆりもブラッディも脱線しすぎなんだよ。 んなこと昨日に戻って明日になれば解るじゃん。 とにかく、今はこいつらの姉さまをどうにかするために、 殴り込みをかけようぜ。 | ||
2-111 | [ブラッディ] | そしてアタシは クロエに言われたとおり、 なんの変哲もない 空間防御結界解除の魔法陣を作った。 こんなので大丈夫かと思ったけど、 魔法陣を通り抜けると、 行き止まりのはずの滝の向こうには 延々と果てしなく小川が続いていた。 | ||
(BGM) | (「Steep Out」終了) | |||
(ジングル) | (「Runaway」) | |||
3-1 | ミサキ | おやおや、彼女たちは なんて冒険好きなんでしょうね。 それでは 《第三章 ジェイソンの覚悟》 に参りましょうか。 | ||
(ジングル) | (「Fight oh!!」) | |||
(BGM) | (「ブラインド」開始) | |||
3-2 | [スピカ] | ボクらが、犬、じゃなかった オオカミの姉弟を見つけたころ、 ソフィーたちは今回の異変に 気付いたみたいだった。 | ||
3-3 | ナレーターA | 【場所は変わって森の遊歩道にて】 | ||
3-4 | ソフィー | ! 今、なにか感じなかった、美弥? | ||
3-5 | 美弥 | たぶん、空間が一瞬、歪曲した。 | ||
3-6 | ナレーターB | ☆ 木々の枝を飛び渡りながら天草いよが来る。 | ||
3-7 | いよ | おーい、今、変な妖力を感じたんだけど。 | ||
3-8 | ナレーターB | ☆ 天草いよにおぶさっていた海藤咲希が地面に降り立つ。 | ||
3-9 | 咲希 | よいしょっと、知ってる魔力が四つ消えたみたいだね。 | ||
3-10 | ソフィー | スピカ、たちね? | ||
3-11 | 咲希 | 間違いないね。 | ||
3-12 | ソフィー | 咲希、どのへんに空間異常を感じる? | ||
3-13 | 咲希 | ちょっと待って。――小川全体とその遊歩道にかけて? かな。 | ||
3-14 | ソフィー | 美弥、マクロフォディアで見れる? | ||
3-15 | 美弥 | 今やってる。 スピカ、ちゆり、ブラッディ、クロエの四人の姿が…… 学院内のどこにもない…… | ||
(BGM) | (「ブラインド」終了) | |||
(BGM) | (「深い森」開始) | |||
3-16 | ナレーターA | 【場所は変わって 小川沿いの山中にて】 | ||
3-17 | [スピカ] | そのころ、ってそのころになるのか? ああ、次の日のほうが適切だね (笑) ボクらは人狼の里に向かって川を上っていた。 | ||
3-18 | ちゆり | まだ着かないのー? | ||
3-19 | スピカ | 暑いぃー! なあ、オマエら、もう、一時間近く歩いてんだけど、 いつになったら着くんだよ。 | ||
3-20 | 人狼姉 | もうすぐ、あの滝の向こう。 | ||
3-21 | スピカ | はあ? 滝? そんなのどこにあるんだよ? | ||
3-22 | ちゆり | はぁはぁ、滝なんてないじゃない。 | ||
3-23 | スピカ | ブラッディ、ちょっと飛んで見てきてよ。 | ||
3-24 | ブラッディ | そうだな。斥候してくるか。 ブラッディーウィーング! | ||
3-25 | スピカ | いちいち叫ぶなよ。 | ||
3-26 | ナレーターB | ☆ ブラッディは川上を目指して飛んでいった。 しばらくして、遠くからブラッディの大声が聞こえた。 | ||
3-27 | ブラッディ | ス、スピカー!! | ||
(BGM) | (「深い森」終了) | |||
(BGM) | (「広がる世界」開始) | |||
3-28 | [スピカ] | ボクらは空中に浮かぶ ブラッディの足元にまで着いたとき、 驚愕を隠せないでいた。 目の前には大空が広がり、 今まで隣を流れていた川はなくなり、 ボクらの足元には数百メートルにも 及ぶ高さの滝が現れた。 そう滝、ボクらは断崖の頂上にいたんだ。 そして眼下に広がる異様な町並みに言葉を失うしかなかった。 | ||
3-29 | ちゆり | なに?! ここ!! スゴーい!! | ||
3-30 | クロエ | すごい所に来たかも。 | ||
3-31 | スピカ | まてまてまて、ウソだろ! | ||
3-32 | ブラッディ | これは、たまげたなー。 | ||
3-33 | [スピカ] | 川がいきなり逆流? そして大きな滝に? いやいやそれはよくないけど、 いいとして…… 異質極まりないのが、町並みだった。 日本にあるべくもない、 それはアニメに出てくるような ファンタジー世界によくある中世の町並みだった。 それに、それに、なに! あのでっかい城はぁぁぁー。 | ||
(BGM) | (「広がる世界」終了) | |||
(BGM) | (「異国の風」開始) | |||
3-33B | [スピカ] | その時だった。 人狼の姉弟がなにかに反応して 走り出した。 | ||
3-34 | ジェイソン | ――『レイワ、レイワ』 | ||
3-35 | 人狼姉 | あっ、あの声……聞こえる…… ジェイソン兄ちゃんの声、姉さまを呼んでる。 | ||
3-36 | 人狼弟 | ジェイソン兄ちゃんだ! | ||
3-37 | ナレーターB | ☆ 森の中を駆け出す人狼の姉弟。 | ||
3-38 | ちゆり | ど、どうしたの!? あなたたち、どこ行くの! | ||
3-39 | スピカ | ブラッディ! | ||
3-40 | ブラッディ | ああ、追っかける! | ||
3-41 | [スピカ] | そしてボクらも人狼姉弟の後を追ったんだ。 | ||
3-42 | スピカ | どうしたんだよ、おまえら? | ||
3-43 | ちゆり | どうしたの、あなたたち? | ||
3-44 | 人狼姉 | この向こうから、この木の中から、 ジェイソン兄ちゃんの 声が聞こえるの。 | ||
3-45 | ブラッディ | ずっと、森が続いてるだけだぞ。 | ||
3-46 | ナレーターB | ☆ クロエが大木に手を触れた。 | ||
3-47 | クロエ | 木の中からか。う〜ん。これかな? | ||
3-48 | ちゆり | なに!? 大木に扉が現れた。 | ||
3-49 | クロエ | よっと、あれ? 押してダメなら引いてみろと、あれ? 開かないな。 | ||
3-50 | スピカ | なんで? こんなとこに扉があるんだよ。 | ||
3-51 | ちゆり | もしかして、街まで降りるエレベーターだったりして。 | ||
3-52 | クロエ | ブラッディー、ちょいちょい。 ここにさっきの魔法陣をピンストライプしてみてよ。 | ||
3-53 | ブラッディ | ああ、ブラッディー・ピンストライプ魔法陣! | ||
3-54 | スピカ | だから、いちいち叫ぶなっての。 | ||
3-55 | ちゆり | あっ、開いた。 | ||
3-56 | [スピカ] | すると扉の向こうに ボクらと同年代くらいのイケメンが立っていた。 人狼の姉弟は素早く扉を通り抜けてイケメンに抱き付いたんだ。 | ||
3-57 | 人狼姉弟 | ジェイソン兄ちゃーん。 | ||
3-58 | スピカ ちゆり ブラッディ | ジェイソン? | ||
3-59 | ナレーターB | ☆ 空間にいきなり現れた 魔法陣の中から オオカミの姉弟が飛び出してきた。 | ||
3-60 | ジェイソン | おまえたち!? | ||
3-61 | 人狼姉弟 | 姉さまが、姉さまが! | ||
3-62 | ジェイソン | レイワがどうした? | ||
3-63 | 人狼姉 | 姉さまが、姉さまが結婚させられちゃう。 | ||
3-64 | ジェイソン | やっぱりか、 レイワがいつものファミレスに 来ないと思ったら…… クソっ! | ||
3-65 | スピカ | おーい、お取り込み中悪いんだけど、 そっちに行ってもいいかなー? って、こっちの声は聞こえてないか…… | ||
3-66 | ナレーターB | ☆ スピカたちも扉を通り抜けた。 | ||
3-67 | ジェイソン | なんだ! おまえら!? 女子高生? ネコ耳娘に、 その背中の羽、悪魔か! | ||
3-68 | ブラッディ | アタシらは、怪しいもんじゃないよ。 その子たちをたまたま助けたんだよ。 | ||
3-69 | ジェイソン | いや、じゅうぶん怪しいんだが…… それはいいとして、この子らを助けた? | ||
3-70 | ブラッディ | ああ、川で死にかけてたところをね。 アンタがジェイソンかい? 見てのとおりアタシらは人間じゃない。 | ||
3-71 | ジェイソン | 見ればわかる。 俺がジェイソンだ、渾名だけど、 おまえらは一体? | ||
3-72 | 人狼姉 | 魔王さまに山神さまなの。 | ||
3-73 | 人狼弟 | それに女神さま。 | ||
3-74 | 人狼姉 | 化け猫もいるけど、姉さまを助けてくれるの。 | ||
3-75 | ジェイソン | ま、魔王に神様…… | ||
3-76 | ブラッディ | 魔王さまね。まあ、そんなところだね。 アタシはブラッディ……で、ここはどこなんだ? | ||
3-77 | ジェイソン | 木屋平村の瀧宮神社前の……い、一応、バス停なんだけど。 | ||
3-78 | ブラッディ | バス停? ここがか? | ||
3-79 | ジェイソン | ああ、レイワがいつもここから バスに乗ってくるって言ってたから、 レイワを捜しに来たんだ。 | ||
3-80 | ちゆり | ねえ、スピカ、ここって、見覚えない? | ||
3-81 | スピカ | ……あるに決まってんだろ。 ウガァー、なんなんだよ、この設定、 ソロモンにあるバス停が人狼の里への出入り口ってか! この作者、バカにしてんのか! | ||
3-82 | ちゆり | え〜と。ここって、奈良県じゃないわよね…… 徳島県のソロモンよね。 | ||
3-83 | スピカ | おい! クロエ! これどういうことだよ! | ||
3-84 | クロエ | あたしだって、知らないことはある。 | ||
(BGM) | (「異国の風」終了) | |||
(BGM) | (「風の音」開始) | |||
3-85 | ブラッディ | スピカ、うるさい。 原作者の設定、そんなことはどうでもいいよ。 なあ、ジェイソンとかいうあんた、 事情はなんとなく解ってるのか? | ||
3-86 | ジェイソン | ああ、レイワからは、 なんとなく聞かされていた。 知らない相手と無理やり 結婚させられるって、 そうなれば、もう俺とは 会えなくなるって。 | ||
3-87 | ブラッディ | レイワって娘が、人間じゃないこともか。 | ||
3-88 | ジェイソン | ……ああ知ってる。 ……オオカミだってことも…… | ||
3-89 | ブラッディ | そうか、なら、話が早い。 もう一度言っとく、アタシは人間じゃない。 そのアタシが言うんだ、心して聞きなよ。 アタシらは、あの子らに頼まれて、 《婚礼の儀》ってやつをブッ潰しに行く。 だけど、アンタのためにやるのにはどうも腑に落ちない。 人間と化け物が幸せになれるなんて話は おとぎ話でもそうそうあるもんじゃない…… もし仮に、レイワって娘があんたを食ってでも一緒になりたい、 愛し合いたいと言ったら、 あんたは黙って食われる覚悟はあるのか。 相手は人間じゃないんだ。住む世界が違う――。 ――オマエ≠フ覚悟が知りたい。 | ||
3-90 | ジェイソン | お、俺はレイワを愛している。 レイワがそれを望むなら、 俺は食われても構わない―― 魔王、《婚礼の儀》を潰してくれ。 その代償として俺の魂をくれてやる。 だから、だから、レイワを自由に、 自由にしてやってくれ、頼む〔泣き〕 | ||
3-91 | スピカ | おいおいブラッディ、たとえが無茶苦茶だな。 | ||
3-92 | ちゆり | ……よく言ったわ、ジェイソンさん! この私、女神中の女神が絶対に、 レイワさんを助けてあげる! | ||
3-93 | スピカ | ええぇ〜。 | ||
3-94 | ちゆり | スピカ、行くわよ! | ||
3-95 | スピカ | ……はいはい。 | ||
3-96 | ブラッディ | ジェイソン、アンタの覚悟は解った。 | ||
3-97 | ナレーターB | ☆ ちゆり、スピカ、ブラッディの三人が 背中を向けて魔法陣の中に消えていく。 | ||
3-98 | ジェイソン | お、俺も連れていってくれ! | ||
3-99 | クロエ | 君はこっちの世界でレイワさんを待っていてあげて、 おそらく《婚礼の儀》を潰されたレイワさんは 二度とあっち側では生きていけないと思う。だから―― あっ、それと人間の君じゃ、 どうせ役に立たない足手まといだからね。 まあ、こうなるのは全部、 君がレイワさんを惚れさせたのが原因なんだよ。 君の責任だからちゃんと最後まで面倒みてあげなくちゃね。 | ||
3-100 | スピカ | ……クロエのやつ、しれっと止め刺すな。 ちゆりに似てきたんじゃないか。 | ||
3-101 | ちゆり | なんか言った? | ||
3-102 | スピカ | いえいえなにも。 | ||
3-103 | ちゆり | じゃあ、いざ! ブラックローゼス特務隊! 出陣よ!! | ||
3-104 | [スピカ] | こうして、ボクらは人狼の姉弟と共に レイワさんのいる人狼の里を目指したんだ。 | ||
(BGM) | (「風の音」終了) | |||
(ジングル) | (「Runaway」) | |||
4-1 | ミサキ | ジェイソン君、 なかなかのイケメンでしたね。 と、そんなことより あのジェイソン君、 なかなか肝が据わった人間ですね。 突然に現れた人狼の里への 魔法陣に驚きもせず、 はたまたブラッディウイングを見ても眉ひとつ動かさなかった。 いったい何者なんでしょうか? 今後、彼が大和まほろば奇鬼妖神シリーズに どう関わっていくのかは今後のお楽しみとしましょう。 それでは、《第四章 邂逅》の始まりです。 | ||
(ジングル) | (「Fight oh!!」) | |||
(BGM) | (「ひみつ基地」開始) | |||
4-2 | [ちゆり] | 私たちは不思議なくらいすんなりと 人狼の里に入ることができました。 アニメのように大きな城壁や門が あるわけではなかったし、 綺麗に整備された石畳の道を ただ悠然と歩きながら、 だけど一番気がかりだったのは町に人の気配がなかったのです。 | ||
4-3 | ブラッディ | おまえたち、この町には誰もいないのか? | ||
4-4 | 人狼姉 | そんなことない。でもなんで誰もいないの? | ||
4-5 | スピカ | いやいや、こっちが訊いてんだけど。 | ||
4-6 | ちゆり | ねえ、あなたの姉さまの《婚礼の儀》っていうのは、 あのお城でするのかしら? | ||
4-7 | 人狼姉 | よく知らないけど、たぶん。 | ||
4-8 | クロエ | お婆っていう人狼の所に行ってみたら。 | ||
4-9 | スピカ | おっ、それいい考えだな。 なあ、おまえら案内してくれよ。 | ||
4-10 | 人狼姉 | お城にいる。 | ||
4-11 | ブラッディ | なら、やっぱり城だな。 たいていラスボスとか、それにそういう儀式は 城でやるのが普通だろ。 | ||
4-12 | スピカ | まあ、おきまりだね。 | ||
4-13 | [ちゆり] | と言いながら、なんやかんやで10分もしないうちに お城に着いちゃいました。 お城の大きな入口の前には、 ……すごく、違和感あるんですけど…… 何台もの自動車が駐車されていました。 ……馬車とかじゃないのね。 | ||
4-14 | スピカ | おっ! かっけぇー。 まるで四駆の展示会場みたいだな。 あっ、ランボルギーニLM002じゃん! かっけぇえー。 | ||
4-15 | [ちゆり] | スピカが指さした真っ赤な四輪駆動車の運転席のドアが開き、 一人の女性が降りてきました。 | ||
4-16 | スピカ | あいつは!? リンダ・ファーイ! | ||
(BGM) | (「ひみつ基地」終了) | |||
(BGM) | (「ボス登場」開始) | |||
4-17 | リンダ | 鉄拳? なぜここに? | ||
4-18 | [ちゆり] | そして、助手席からも見知った人物が現れました。 | ||
4-19 | 時雨 | どうしたん? あれ? スピカ先輩やん。 | ||
4-20 | スピカ ちゆり | 鹿名時雨! | ||
4-21 | ブラッディ | おまえら、あいつら知り合いなのか? | ||
4-22 | クロエ | ちなみに、あたしも知ってる。 | ||
4-23 | スピカ | ああ、ちょっとスペインでね。 | ||
4-24 | [ちゆり] | それから、後部座席の両扉が開き 二人の人物が降り立ちました。 | ||
4-25 | スピカ | ジリンスカス少佐にリアン!? | ||
4-26 | ちゆり | うわぁー、すごく綺麗な人ね。 | ||
4-27 | ブラッディ | あの人は!? | ||
4-28 | [ブラッディ] | アタシの目はその女性に釘付けにされた。 太陽の光を眩しく反射させる美しい銀色の長い髪に、 すべてを見透かすような、妖しく輝く琥珀色の瞳の女性に。 アタシは覚えている。 十年前、アタシをあの地獄から救い出してくれた あの人のことを。 | ||
4-29 | スピカ | ブラッディ? ジリンスカス少佐を知ってるのか? | ||
4-30 | ブラッディ | あ、ああ、あんまり昔のことは覚えてないんだけど、 あの人のことだけは、はっきりと覚えてる。 アタシはあの人に助けられたんだ。 | ||
4-31 | スピカ | 助けられた? って、まさか十年前の妖怪大戦争の時のか! | ||
4-32 | ニーナ | あれは? スピカ・スカイユ。 ――うん? それにあの娘…… 魔王サテライヤの忘れ形見か? | ||
4-33 | ちゆり | スピカ、こっちに来るわ。 | ||
4-34 | [ブラッディ] | あの人が、あの人が近づいてくる…… アタシの目の前に……。 | ||
4-35 | ニーナ | ……大きくなったわね。 私のこと、覚えているかしら? | ||
4-36 | ブラッディ | あ、あ、あの……覚えています…… あの時は……助けてくれてありがとう。 | ||
4-37 | ニーナ | フフフ、どういたしまして。 | ||
4-38 | スピカ | それより、なんで少佐たちがここにいるんですか? | ||
4-39 | ニーナ | スピカ、おまえこそ、それは、私が訊きたいんだが。 | ||
4-40 | スピカ | え、えーと、ソロモンの監視任務中…… | ||
4-41 | ちゆり | あ、あの私たち、この子たちのお姉さんの友人で、 結婚式に呼ばれたんです。 | ||
4-42 | スピカ | お、おい、ちゆり。 | ||
4-43 | ニーナ | 結婚式? フッ、――そうか。 ――スピカ、事情はよく解らんが騒ぎは起こすなよ。 | ||
4-44 | スピカ | あ、は、はい…… | ||
4-45 | [ブラッディ] | そう言って、あの人《ジリンスカス少佐》は、 城の入口へ向かっていく。 入れ替わりにスピカたちがスペインで会ったという二人の女が こちらにやってきた。 | ||
(BGM) | (「ボス登場」終了) | |||
(BGM) | (「Scirocco」開始) | |||
4-46 | 時雨 | 先輩、久しぶりやね〜。 こんな所でなにしてるん? | ||
4-47 | リンダ | ……スピカ少尉、あの娘は、ついなちゃんは元気かしら。 | ||
4-48 | [ブラッディ] | ピンポンパンポーン♪ この二人《鹿名時雨とリンダ・ファーイ》については、 ボイスドラマ《鬼っ子ハンターついなちゃん第32話》での ゲスト主人公なんで ついなちゃんのボイスドラマを聴いてくれれば解るぞ。 | ||
4-49 | スピカ | ああ、ついなちゃんは元気だよ。 で、おまえらがなんでここにいるんだよ? | ||
4-50 | 時雨 | うちらは、ニーナ少佐の護衛任務かな。 日本は久しぶりや言うてな。 まあ、うちも日本は何十年ぶりやから。 ところで先輩は、なんでこんな所におるん? | ||
4-51 | リンダ | 時雨、そういえばここはソロモンだったわね。 ということは少尉の管轄だから、いても不思議じゃないわよ。 | ||
4-52 | 時雨 | ふーん。 | ||
4-53 | スピカ | ……そ、そういうことだよ。 | ||
4-54 | 時雨 | ふーん、ほんなら、先輩、また後でな。 | ||
4-55 | リンダ | あっ、そうそうスピカ少尉、 これをついなちゃんに渡しておいてくれないかしら、 逢うことはないと思っていたんだけど。 | ||
4-56 | スピカ | これは? | ||
4-57 | リンダ | スペインのおみやげ、 山猫クロエのペンダント、お守りよ。 市販の物だけど、 こちらで少しばかり魔除けの術式を施してあるの、 逢えるなんて思ってもいないのに、なぜかしらね、 日本に行くって決まったらあの娘にあげたいと思ってね…… 余計なお世話だったら少尉が捨てておいて、それじゃあね。 | ||
4-58 | スピカ | ちっ……捨てれるわけないじゃん〔小声〕 | ||
4-59 | クロエ | あたしはここにいるんだけどな。 | ||
4-60 | [ブラッディ] | そしてアタシらは、 あの人ニーナ・ジリンスカス少佐たちとは別に、 人狼の姉弟と城の裏口から城内に入ることになったんだ。 当初の目的では人狼のお婆に会って 事情を訊くはずだったんだけど、 姉弟達に連れられて入った部屋には、 姉さまと呼ばれるレイワって娘がいたんだ。 | ||
(BGM) | (「Scirocco」終了) | |||
(BGM) | (「白昼夢」開始) | |||
4-61 | ナレーターA | 【場所は変わって 城内のレイワの寝室にて】 | ||
4-62 | 人狼姉弟 | 姉さまー。 | ||
4-63 | レイワ | あなたたち! どこに行っていたの、心配したのよ! | ||
4-64 | 人狼姉 | 神様たちを連れてきたよ。 姉さまを助けてくれるの。 | ||
4-65 | レイワ | 神様? 助ける? | ||
4-66 | ちゆり | あなたが、この子たちの姉さま? | ||
4-67 | レイワ | !? なに! あなたたちは! | ||
4-68 | スピカ | ボクらは、こいつらが川辺で弱ってたところを助けたんだ。 そしてあんたの事情を聞いてね。 こいつらに頼まれて 《婚礼の儀》ってやつをぶっ壊しにきたんだ。 | ||
4-69 | レイワ | どういうこと? | ||
4-70 | ちゆり | あなたが無理やりに結婚させられるって聞いたのよ。 | ||
4-71 | ブラッディ | その儀式を止めさせる。 | ||
4-72 | クロエ | あたしたち事情はよく解ってないんで、 詳しく教えてくれない? | ||
4-73 | レイワ | ……あなたたちは、 自分たちの部屋に戻ってなさい。 わたしは神様たちと 大事なお話があるの。 | ||
4-74 | 人狼姉 | 姉さま〔心配そうに〕 | ||
4-75 | レイワ | ありがとう、神様たちを連れてきてくれて、 大丈夫だから、ね、お願い。 | ||
4-76 | 人狼姉 | うん、解った〔渋々〕 | ||
4-77 | レイワ | ……あなたたちが何者かは 知らないけど、 ここ人狼の里に来られたってことは 普通の人間じゃないのね。 ……あの子たちを助けてくれて ありがとう。 それにあの子たちのわがままに付き合ってくれて感謝するわ。 | ||
4-78 | スピカ | なら、あんたを助けてかまわないんだよな。 | ||
4-79 | レイワ | ……あなたたち、この町を見て、不思議に思わない? | ||
4-80 | ちゆり | すごい、ファンタジックな町並みね。 | ||
4-81 | スピカ | 潰れたテーマパークみたいだな。 | ||
4-82 | ブラッディ | ……生気がまったくない。 | ||
4-83 | レイワ | ……そう。この町は死にかけているのよ。 | ||
4-84 | スピカ | 死にかけてる? どういうことだよ? | ||
4-85 | レイワ | ほかの人たちを見かけた? | ||
4-86 | クロエ | ほかの人狼とは出会わなかった。 | ||
4-87 | レイワ | きっと、みんなもう城の大広間に集まっているわ。 それもたかだか30名ほどの老人ばかりよ。 | ||
4-88 | ブラッディ | お世辞にも広い町とは言えないが、 住んでるのが、それっぽっちとは思えないんだけどな。 | ||
(BGM) | (「白昼夢」終了) | |||
(BGM) | (「セピアの影絵」開始) | |||
4-89 | レイワ | この町はね、大昔に魔族の王が、 人狼たちのために作った場所なの。 昔は何百人も住んでいたそうよ。 だけど時が経つにつれてだんだんと その数を減らしていったわ。 その理由の一つが…… ここ人狼の里を作ったその魔王が死んでから、 町を維持する魔王の魔力の供給がなくなって、 六十年に一度、人柱をたてて、そう、 乙女の生贄によって魔力を回復させる儀式が必要になったの。 そんなことまでして、この町にしがみついているのが嫌になった 一族の人狼たちは少しずつ町を捨てていったわ。 | ||
4-90 | ちゆり | 人柱? 結婚式じゃないの? | ||
4-91 | レイワ | 妹たちが、そう言ったのね。 無理もないわ、 子供たちには、本当のことなんて 話せないもの。 | ||
4-92 | ブラッディ | その生贄ってのがあんたか? | ||
4-93 | レイワ | そうね。 | ||
4-94 | ブラッディ | それは、どうなる? | ||
4-95 | レイワ | 永遠の死を意味するわ。 | ||
4-96 | スピカ | まてまて、死ぬってことか? それであんたはいいのか? | ||
4-97 | レイワ | ……仕方がないわ。この町を守るためだもの。 | ||
4-98 | ちゆり | ちょっと、おかしいわそんなの! 素敵な町だけど、30人くらいしか住んでないんでしょ? | ||
4-99 | スピカ | そこかよ。 | ||
4-100 | レイワ | それでも、わたしたち一族が、 昔からずっと行ってきたことだから。 私が生まれてきた意味だから。 | ||
4-101 | ちゆり | そんなの、そんなのありえないわよ! | ||
4-102 | スピカ | ちっ…… | ||
4-103 | ブラッディ | ……レイワ。……アタシらはジェイソンと会った。 | ||
4-104 | レイワ | !? 彼と会った! | ||
4-105 | ブラッディ | ああ、アイツはアタシにこう言った。 アンタを愛してる、アンタを自由にしてやってくれって、 そのためにアタシに命を差し出すってね。 | ||
4-106 | レイワ | ……ジェイソン〔泣き〕 | ||
4-107 | ブラッディ | アタシはアイツの覚悟に約束した。 アンタを自由にしてやるって。 | ||
4-108 | レイワ | そんなの無理よ! 私たち一族の、一族の掟なのよ! そんなことできるわけないじゃない!!〔泣きながら〕 | ||
4-109 | スピカ | 掟だー、あんたバカじゃないのか。 そんな理不尽な掟、ボクは認めない。 掟が掟じゃなくなればいいんだろ。 こんな腐れテーマパーク、ボクらの力で…… 一瞬で灰にしてやるよ。 | ||
4-110 | ちゆり | スピカ! | ||
4-111 | クロエ | スピカとちゆりの合わせ技の 雷撃爆裂魔法《ヘヴィメタル》でなら可能だけど、 それはやりすぎかも。 | ||
4-112 | レイワ | スピカ? …… | ||
4-113 | スピカ | じゃあ、どうすんだよ! | ||
4-114 | ブラッディ | レイワ、生きてジェイソンに会いたくないのか? | ||
4-115 | レイワ | 会いたいわよ! 会いたいわよ! あの人と一緒に生きていきたいわよ―― でも、どうにもならない! ――わたしだけならいいと思ってる、 だけど次はきっと妹たちの子供が私と同じ運命をたどる! これは掟なのよ!〔泣きながら〕 | ||
4-116 | スピカ | だから言ってんだろ! こんな町、壊してやるって!! | ||
4-117 | ブラッディ | うるさい! スピカ! | ||
4-118 | スピカ | はぁ〜? | ||
4-119 | ブラッディ | そんな単純なことじゃないんだよ、 そんな単純なことじゃ。 | ||
4-120 | クロエ | まあまあ、二人とも。 二人が熱くなってどうするニャ。 | ||
4-121 | スピカ | ちっ、ニャって、 おまえはあい≠ゥよ。 | ||
4-122 | ちゆり | スピカ、落ち着いて。 | ||
(BGM) | (「セピアの影絵」終了) | |||
(BGM) | (「あの日あの時」開始) | |||
4-123 | クロエ | とりあえず、《婚礼の儀》は 間違いなく今夜だと思う。 これを逃せば一年後じゃないと 儀式は成立しない。 ってことは、レイワさんが 今夜、人柱にならなければ この町は崩壊するね。 となると……スピカ、ソロモンへの影響をどう考える。 | ||
4-124 | レイワ | ソロモン? スピカ? …… | ||
4-125 | スピカ | ソロモンへの影響? | ||
4-126 | クロエ | そう、このオオカミの町はソロモンの中にあるんだよ。 この町が消滅すれば、ソロモンの時空バランスが乱れて、 ソロモン自体の結界が壊れかねない。 そうなれば、スピカは困るんじゃないかな。 | ||
4-127 | スピカ | なら、なんかいい方法があるてっのか? | ||
4-128 | クロエ | 今は言えない。 けど、ブラッディになら、なんとかできると思う。 | ||
4-129 | ブラッディ | アタシに? | ||
4-130 | スピカ | なんだよ? はっきり言えよ、クロエ! | ||
4-131 | クロエ | それが、あたしにも、今はよく解らないんだよね。 そんな気がするだけなの。 | ||
4-132 | スピカ | ちっ、それでも神様かよ、めんどくせーな。 | ||
4-133 | ブラッディ | じゃあクロエ、どうするんだ? | ||
4-134 | クロエ | とりあえず、あたしたちも儀式に参列する。 そしたら、たぶん、解ると思う。 | ||
4-135 | レイワ | あなた、スピカって、もしかして、 ソロモンの守護神、スピカ・スカイユなの? | ||
4-136 | スピカ | スピカ・スカイユはボクだけど、 守護神って、なんだよそれ。 | ||
4-137 | レイワ | わたしを覚えてない? 木屋平の山小屋で小さいころ 一緒に遊んだオオカミよ。 | ||
4-138 | スピカ | オオカミ? 遊んだ? ……も、もしかして、基地で大佐によく懐いてた、 銀毛の犬の…… 思い出した! レイワって犬か! | ||
4-139 | レイワ | そうよ、スピカ! ……犬じゃないけど…… | ||
4-140 | [ブラッディ] | どうやら、人狼の娘レイワと スピカは 過去に出会っているらしかった。 俄然ヤル気になったスピカは、 この町の人狼たちが崇める ソロモンの守護神の名前を利用して、 《婚礼の儀》の参列を希望、 アタシらは、スピカの子分ってことで同席を許されたんだ。 そして、儀式が始まろうとする逢魔が時、 アタシらは、スピカを先頭に 分厚く重い大きな扉が開かれた大広間に案内された。 儀式の祭壇の中心にはレイワが寝かされ、 祭壇の下に、あの人ニーナ・ジリンスカスが こちらを睨むようにして立っていたんだ。 | ||
(BGM) | (「あの日あの時」終了) | |||
(ジングル) | (「Runaway」) | |||
5-1 | ミサキ | 出会いとは不思議なものです。 偶然なのか、 否、もはや必然でしか ありませんね〔小笑〕 さて、いよいよ城内に潜入した スピカたち、 《婚礼の儀》の参列にまで漕ぎつけましたが、 儀式の妨害は、うーん、うまく行くとも思えませんね。 それでは、《第五章 王の血を受け継ぐもの》スタートです。 | ||
(ジングル) | (「Fight oh!!」) | |||
(BGM) | (「Drain」開始) | |||
5-2 | [リアン] | 私の名前は 《リアン・フェルナンデス大尉》、 モヨケイツーの剣・第13独立大隊の 副指揮官だ。 そして、人間じゃない。 人狼ってことでよろしく頼む。 人狼の里で久しぶりに会ったスピカだが、 ソロモンの監視任務でも《婚礼の儀》の招待客でもなかった。 スピカのことだから、なにかやらかすとは思っていたが。 ピンポンパンポーン♪ 尺の都合上、大幅カットで進めるぞ。 スピカと会ってから三時間後の城の大広間での茶番劇から 物語は始まるんだが……。 | ||
5-3 | ナレーターA | 【城内の大広間にて】 | ||
(BGM) | (「Drain」終了) | |||
(BGM) | (「ゴシック・ナイト」開始) | |||
5-4 | スピカ | その儀式、ちょっと待ったー! | ||
5-5 | リアン | ニーナ、案の定だ。始めやがったぜ。 スピカのやつ、バレバレだってのに。 | ||
5-6 | ニーナ | もう少し、黙って観ていようじゃないか。 | ||
5-7 | スピカ | ソロモンの守護神、スピカ・スカイユの名に於いて命ずる! なんていうか、その、人柱は中止だ! | ||
5-8 | (ガヤ) | ――ザワザワ | ||
5-9 | [リアン] | そりゃ、ザワつくわな。 スピカは知らないだろうが、あいつが城内に入った時点から、 こちらの部下の耳のいい奴に監視をさせていた。 《婚礼の儀》を潰しにきたことは、早々にわかってたんだが、 クロエって娘の 「ブラッディにならなんとかできる」って言葉に ニーナがえらく興味を惹かれたみたいだ。 それにスピカがどう動くのか面白そうだから しばらく自由にさせておけってことでこの有様なんだがな。 | ||
5-10 | 人狼町長 | スピカさま、なんと申されましたか。 人柱を中止せよと! それでは、永きに亘って生き続けてきた この町を屠るというのですか?! | ||
5-11 | スピカ | レイワの命を使ってかよ? そんなのボクが許すと思ってんのか? | ||
5-12 | 人狼町長 | レイワには、それが運命、 レイワもそれは重々承知の上、 これが我ら一族の掟なのです。 | ||
5-13 | ちゆり | 掟、掟って、あなたたち、時代遅れにも程があるわよ。 人の命を使うですって、 そんなこと、この女神の私、真田ちゆりが許さないわよ! | ||
5-14 | ニーナ | フッ、あの、黒髪、自分で女神と言うか。 | ||
5-15 | リアン | 話に聞いてる雷神憑きの娘だね。 化け物に向かって、あんな啖呵、 スピカの相棒なだけはあるわ。 ……さて、ニーナ、そろそろ私が行こうか? | ||
5-16 | ニーナ | 好きにしろ。 | ||
(BGM) | (「ゴシック・ナイト」終了) | |||
(BGM) | (「Shred Dance」開始) | |||
5-17 | リアン | スピカ! 久しぶりに会ってなんだが、 いくらソロモンの守護神といっても、 オオカミの世界のことに、 いちいち首つっこんでんじゃねーぞ。 | ||
5-18 | スピカ | リアン、そんなこと関係ないね。 ボクはレイワを守る、それだけさ。 | ||
5-19 | リアン | おまえは、昔から融通が利かないんだよ。 言ってるだろ、早死にするぞって。 | ||
5-20 | スピカ | 大きなお世話だよ、師匠。 | ||
5-21 | [リアン] | 私は素早くヒップ・ホルスターから拳銃を引き抜いた。 アタックで私より早い抜き打ち魔銃士はいない。 まあ、弟子のスピカを除いてはな。 両肩に二発ほど撃ち込んでおけば黙るだろう。 さすがに丸腰のスピカに負けはしないと高を括ってたんだが。 | ||
5-22 | ブラッディ | スピカ! つっこめ! 防御魔法陣! | ||
5-23 | ナレーターB | ☆ スピカの前に魔法陣が展開し、 リアンが放った二発の銃弾を弾き返した。 | ||
5-24 | リアン | なっ! 魔法シールドか! あの赤髪!! げッ! スピカ! | ||
5-25 | スピカ | 終わりだぁー! | ||
5-26 | [リアン] | かはっ! 私はスピカにあっさりと懐に潜り込まれて 腹に一発もらっちまった。 なんてスピードだ、一瞬にこの距離を詰めんのかよ。 ってそうか、サイクロプスを使役してから 魔力が上がったっていってたっけ。 それと鉄拳のスピカ、 そういえばステゴロの方が得意だったよな。 | ||
5-27 | スピカ | リアン、まだ、やるか? | ||
5-28 | リアン | やるなスピカ。こりゃ、私も本気を出さねぇとな。 | ||
5-29 | [リアン] | スピカの右肩を掴んた私はそう呟くと、 すぐさま獣人モードに変身した。 | ||
5-30 | スピカ | なっ?! リアン、おまえ!! | ||
5-31 | リアン | 驚いたか、私も実はオオカミなんだよ。 | ||
5-32 | スピカ | マジか! かっけぇー! | ||
5-33 | リアン | あん? こんなときに、なに言ってんだよ。 余裕ってか! | ||
5-34 | ニーナ | リアン、もういい。 | ||
5-35 | [リアン] | スピカの言葉に拍子抜けした私にニーナの声がかかった。 | ||
5-36 | ニーナ | スピカ、騒ぎを起こすなと言ったはずだが。 | ||
5-37 | スピカ | 少佐、少佐が人狼だってのは 大佐から聞いてたから知ってたけど、 まさかリアンもそうだったとは知らなかった。 だからなんですか? この儀式に二人がいるのは? それともアタックの任務と関係があるんですか? | ||
(BGM) | (「Shred Dance」終了) | |||
(BGM) | (「審判の日」→「不倶戴天」開始) | |||
5-38 | ニーナ | 任務ではない…… それはな、 私がオオカミ王の正統なる血を 受け継ぐ者だからだよ。 話はレイワから聞いたのだろう? 魔王の魔力がなくなった今、 触媒となる赤き石と私の血が混じり合うことで、 この町の魔力核炉は動き出す。 これは、魔王とオオカミ王の契約によるものだ。 | ||
5-39 | スピカ | 赤き石? | ||
5-40 | ニーナ | 赤き石だ。 レイワの血族の乙女にのみ強制的に赤き石が魔術精製されるよう 魔王が自らの血を分け与えたシステムだ。 赤き石の精製にはレイワの魂が必要となる、すなわち死だ。 | ||
5-41 | スピカ | だから、レイワが死んでいいわけはない。 | ||
5-42 | リアン | スピカ、この町はな、 人狼にとっての最後の聖域なんだよ。 | ||
5-43 | スピカ | だからって。 | ||
5-44 | ニーナ | そこの、クロエとか言ったか、すべてを話したぞ。 さあ、どうする。 それにブラッディ、私がおまえを救ったように、 今度はレイワをおまえが救う番ではないのか? | ||
5-45 | クロエ ブラッディ | あたし(アタシ)? | ||
5-46 | [リアン] | ニーナはそう言い終えると、 スピカの目の前に歩み寄り、私を退かせた。 | ||
5-47 | スピカ | 少佐、マジで止めてくれませんか…… | ||
5-48 | ニーナ | スピカ、おまえらは何をしようとしているのか 解っているのか? これはわれら一族にとっての大事な儀式だぞ。 それを壊すことがどういうことか。 ――まあいい、今は軍務ではない。 ――鉄拳のスピカ、 私は一度、おまえと戦ってみたかったんだよ。 大佐が執拗におまえを擁護する本当の意味を知りたいんだよ。 | ||
(BGM) | (「不倶戴天」終了) | |||
5-49 | スピカ | 少佐といえど、ボクのジャマはさせない。 | ||
5-50 | リアン | スピカ、バカか、あいつ。 | ||
(BGM) | (「Crossing」開始) | |||
5-51 | ニーナ | そうか、いい答えだ。 ――来い! 餓沙王。 | ||
5-52 | [リアン] | ニーナが右手を高々と持ち上げた。 吹き抜けの高い天井に設けられた 天窓の一つが砕け散ったかと思うと、 落雷のごとき光が ニーナの掌に吸い込まれた。 刹那ニーナの体全体が金色に輝く。 咄嗟にスピカは後方に飛び退く。 そして、そこに現れたのは愛剣餓沙王を持った、 半獣モードのニーナだった。 | ||
5-53 | スピカ | なんて、プレッシャーだ! | ||
5-54 | ニーナ | スピカ、殺す気でこいよ。 | ||
5-55 | ちゆり | スピカぁー! | ||
5-56 | スピカ | ちゆり、遠くに離れてろ。 | ||
5-57 | ダタラッチ | 『そろそろ、私の出番かな』 | ||
5-58 | スピカ | おそいぞ! ダタラッチ! 今までナニしてたんだよ。 | ||
5-59 | ダタラッチ | 『静観していたが。 しかし、これほど強力な魔力の塊を、 そうそう見れるもんではないのでな。 少し興味が湧いた』 | ||
5-60 | スピカ | 勝てそうか? | ||
5-61 | ダタラッチ | 『戦いとは、常に二手三手先を読んで行うものだ』 | ||
5-62 | スピカ | ちっ、言ってろ。行くぞ! ダタラッチ。 | ||
(BGM) | (「Crossing」終了) | |||
(BGM) | (「攻防戦」開始) | |||
5-63 | ナレーターB | ☆ ニーナとスピカの 激しい攻防が続く! | ||
5-64 | スピカ | クソ! 剣尖を見切るのに手いっぱいか。 | ||
5-65 | ニーナ | 残念だよスピカ、拳が私に掠りもしないぞ (笑) | ||
5-66 | スピカ | (微笑) 少佐に本気なんて出せるわけないじゃん〔疲れた感じ〕 | ||
5-67 | ニーナ | そうか、ならば本気を出させてやろう。 おまえの大事な――黒髪の娘を殺してな! | ||
5-67B | スピカ | ちゆりぃー! | ||
5-68 | [リアン] | ニーナが目にも止まらぬスピードで黒髪の娘に切りかかる! それ以上の速さでスピカも動いた! 黒髪の脳天を餓沙王が直撃するか否かの 寸でのところでスピカが黒髪を押し退け 眼前に迫る餓沙王を、赤く輝く両手で受け止めやがった。 マジか! | ||
(BGM) | (「攻防戦」終了) | |||
(BGM) | (「GAZE」開始) | |||
5-69 | ニーナ | ほう、やればできるじゃないか。 | ||
5-70 | スピカ | 少佐ぁぁー、あんたはボクを本気で怒らせた…… 殺す! | ||
5-71 | ナレーターB | ☆ スピカの碧眼が金色に変色した。 | ||
5-72 | ニーナ | フハハハハハ、いいぞ、スピカ、その目だ、 その目を待っていたぞ! | ||
5-73 | [リアン] | ピンポンパンポーン♪ この生アフレコショーじゃ、 戦闘シーンを表現するのって 結構無理があるんだよな。 まあ、これはアニメじゃないと 面白くないと思うんで、 壮絶な戦闘シーンはカットってことで了承してくれ。 で、まあ、二人の攻防の末、餓沙王の剣先が スピカの目の前で止まったところからってことでよろしく。 | ||
5-74 | クロエ | ストーップ! | ||
5-75 | スピカ | なんだ?! 手足が動かない | ||
5-76 | ニーナ | フッ、やっと答えが見つかったか。 | ||
5-77 | ダタラッチ | 『スピカ、足元を見ろ』 | ||
5-78 | スピカ | 魔法陣! ブラッディか! | ||
5-79 | ブラッディ | クロエが答えを導き出した。 二人はもう戦わなくてもいいよ。 レイワも、この町も救えるんだ。 | ||
(BGM) | (「GAZE」終了) | |||
(BGM) | (「思案のとき」開始) | |||
5-80 | [リアン] | ブラッディって娘が魔法陣を解くと、 スピカがその場にへたりこんだ。 たぶん私だけが気づいたと 思うんだが、 ニーナの指先とつま先が 僅かに動いていたことに。 おそらくニーナにはブラッディって娘の 呪縛魔法は効いてなかったみたいだな。 | ||
5-81 | ニーナ | そうか、ならば、その方法を聞かせてくれるかな? | ||
5-82 | ブラッディ | アタシの血だ。 | ||
5-83 | スピカ | 何言ってんだよ、ブラッディ。 | ||
5-84 | ナレーターB | ☆ ブラッディは自身の爪を伸ばすと、手首に切り傷を付けた。 したたり落ちる血液が床に落ちると同時に 赤い血は液体ではなく、 コロンと音をたてて床を転がる小さな赤い石となった。 | ||
5-85 | ブラッディ | 思い出したんだよ。アタシが悪魔族に囚われていた日のことを、 アタシは毎日毎日血を採られていた。 なぜだかは解らなかったけど、 たぶんこれが奴らにとっての私を生かしておく理由だったんだ。 流れた血がなぜ石になるのか解らなかった。 きっと魔族の血を半分受け継いでいるからだと、 魔族ってのはこんなもんなんだと。 だけどクロエが教えてくれたんだ。 | ||
5-86 | クロエ | 確証はなかったけど、どの世界かの魔王の血が 赤き石《エリクサー》の原点だってのを思い出したの。 それと魔王が作った祭壇の悪魔文字の中に ブラッディがよく使う同じ形の文字が読み取れた気がしてね。 もしかしてと思ってブラッディに出血させてみたら、 《エリクサー》になっちゃったからね。 | ||
5-87 | ブラッディ | だからアタシの血があれば、レイワは死ななくてすむはずだ! | ||
5-88 | ニーナ | 上出来だ! しかし、今はよくても、六十年後の儀式はどうする? その次の六十年後は? 魔王のいない今、この儀式は未来永劫続くのだぞ。 | ||
5-89 | ブラッディ | そ、それは、その時に考える。 | ||
5-90 | ニーナ | 人間臭いことを、尤もらしく言えるおまえたちには、 やはり理解などできまいな。 ブラッディ、いいことを教えてやる。 もう自分でも気づいているだろう。 おまえは、この町を作った魔王サテライヤと 人間の間に生まれた子供なんだよ。 解るか? この意味が、 私の同族が死ななくていい、触媒の赤き石などに頼らず、 おまえが魔力核炉と一つになれば この町は永遠に生きることができるぞ。 | ||
(BGM) | (「思案のとき」終了) | |||
(BGM) | (「宵のカラス」開始) | |||
5-91 | ちゆり | バカじゃないの。 それって、あなたが言った 人間臭い≠チてことじゃない! ブラッディによく言えたもんね。 | ||
5-92 | スピカ | ちゆり、止せ! | ||
5-93 | ブラッディ | ……いいよ。 もともとアタシの命なんてなかったようなもんさ、 あなたに救われてなきゃね。 アタシ一人の命でこの先、だれも死ななくていいなら、 アタシの命なんかくれてやるよ! | ||
5-94 | スピカ | バカ言うな! | ||
5-95 | ちゆり | バカ言わないで、ブラッディ。 | ||
5-96 | ブラッディ | いいんだよ、スピカ、ちゆり。 あんたらと過ごした日々は本当に楽しかったよ。 たぶん、こうなるのがアタシの運命だったんだよ。 今までありがとな。 | ||
5-97 | スピカ | ボクは許さないぞ! | ||
5-98 | ちゆり | ブラッディィー! | ||
5-99 | クロエ | ――えっと、もう、いいかな…… ブラッディは死ななくても大丈夫なんだけど。 | ||
5-100 | ちゆり | クロエ? どういうこと? | ||
5-101 | クロエ | オオカミ王のお姫さまはもうわかってたと思うけど、 今までこの町を生かしてきた魔力核炉は 不測の事態用に作られた緊急用のサブユニットなんだよ。 これは稼働時間が六十年しかもたない。 仕方のないことだけど触媒の赤き石を作るのに、 どうしてもレイワさんの一族の犠牲が必要だったの。 だけどメインの魔力核炉が動きだせばサブは必要なくなるのね。 そしたら魔王の血を受け継ぐ者、その魔力が絶えない限り メインの魔力核炉が止まることはないよ。 | ||
5-102 | ブラッディ | なら、魔王の子であるアタシが生まれているのに、 なぜ、メインの魔力核炉は止まってたんだ? | ||
5-103 | クロエ | それは、魔王が死んだからだけど。 | ||
5-104 | ブラッディ | なら、アタシはいつ生まれたんだ? | ||
5-105 | クロエ | 魔王がいつ死んだと思う。 この世界ではもう二千年以上も前になるかな。 | ||
(BGM) | (「宵のカラス」終了) | |||
(BGM) | (「陰影」開始) | |||
5-106 | ニーナ | ほう、そんなにも大昔とはな。 私が知る限りメインの魔力核炉は数百年完璧に止まっていた。 それが十五年前、急に再起動を始めたんだよ。 なぜだと思う、魔王の血を受け継ぐ者の存在だ。 | ||
5-107 | スピカ | 少佐! ってことはブラッディはタイムトラベルして、 この世界に来たってことなんですか? | ||
5-108 | ニーナ | フッ、そうなんだろうな。 まるで夢のような話だが、それ以外に考えられまい。 | ||
5-109 | ブラッディ | ア、アタシが過去から来た…… | ||
5-110 | ニーナ | 私達、人狼側の組織とモヨケイツーの剣は、 五年もかけてようやくおまえに辿り着いたよ。 おまえがこの世界から消滅してもらっては困るのでな。 | ||
5-111 | スピカ | うん? ちょっと待てよ? 少佐? 今、再起動……って言いましたよね。 | ||
5-112 | ニーナ | そうだな。 | ||
5-113 | ちゆり | なに? ってことは、人柱なんて必要ないんじゃ? | ||
5-114 | クロエ | ないね。メインの魔力核炉はもう動いてるし。 あたし、さっき『今までは』って言ったんだけど。 | ||
5-115 | スピカ ちゆり | ってことは? | ||
5-116 | リアン | スピカ、ニーナの性格を理解しろよ。 | ||
5-117 | スピカ | えええ〜! | ||
5-118 | ニーナ | そういうことだ。 | ||
5-119 | ちゆり | なら! 儀式はなんのためにしようとしたのよ! | ||
5-120 | リアン | やれやれ、ニーナに向かって、スゴイなこの娘。 | ||
5-121 | ニーナ | 《婚礼の儀》は、我ら一族にとっての神聖な儀式だ、 止めることなどできるはずもない。 ……まあ、これからは、今日までに 命を賭して町を守ってくれた 数多の兄弟たちを弔う儀式となるだろうな。 | ||
(BGM) | (「陰影」終了) | |||
(BGM) | (「星に祈りを」開始) | |||
5-122 | スピカ | な、なんだったんだよ。 | ||
5-123 | ニーナ | スピカ、楽しませてもらったぞ。 | ||
5-124 | スピカ | ボク、殺されかけてたんですけど。 | ||
5-125 | ニーナ | 貴様が死ぬタマか―― フフッ、おまえを殺せば、私が大佐に殺されるよ。 それだけは勘弁してくれ (笑) | ||
5-126 | [リアン] | とんだ茶番劇だったな。 ――そうそう、実のところ、人狼の里の者には メインの魔力核炉が復活していることは 知らされていなかったんだ。 今日の儀式で打ち明けられるはずだったんだが、 まさか、スピカたちの乱入があるとは、 さすがのニーナもこればっかりは予想してなかったんだよな。 | ||
5-127 | 人狼町長 | 姫様、それでは、レイワの命は、 レイワは助かるのですか?! | ||
5-128 | ニーナ | 端からそのつもりだったが、 ソロモンの守護神が余計なことをしてくれたおかげで、 言いそびれただけだがな。 | ||
5-129 | 人狼町長 | おお〜、ありがとうございます、ありがとうございます。 | ||
5-130 | ニーナ | 礼は、そこの魔王の娘に言うんだな。 | ||
5-131 | ブラッディ | アタシが過去から来た……二千歳……二千歳…… | ||
5-132 | ちゆり | ブラッディ、ブラッディ、しっかりしてよ! | ||
5-133 | ブラッディ | はっ、ち、ちゆり、ア、アタシは何歳に見える? | ||
5-134 | ちゆり | なにバカなこと言ってんのよ! わたしたちと同い年でしょ! | ||
5-135 | ブラッディ | そ、そうだよな。 | ||
5-136 | ちゆり | そんなことより、 まだ、やらなきゃいけないことがあるでしょ。 | ||
5-137 | ブラッディ | やらなきゃいけないこと? | ||
5-138 | ちゆり | ジェイソンよ。 | ||
5-139 | ブラッディ | はっ、そうか。 | ||
5-140 | 人狼町長 | 魔王さま、レイワの命を救っていただきありがとうございます。 | ||
5-141 | ブラッディ | あんたがレイワのオヤジか。 アタシに感謝するんなら、 一つアタシの頼みを聞いてくれないかな。 | ||
5-142 | 人狼町長 | はあー、なんなりとお申し付けください。 | ||
5-143 | ブラッディ | レイワを、レイワを結婚させてやってくれ。 | ||
5-144 | 人狼町長 | け、結婚!? あ、あ、あの、魔王さまの嫁にということでしょうか? | ||
5-145 | ブラッディ | ち、ちがうよ! 人間の男とだ。 | ||
5-146 | 人狼町長 | 人間と! | ||
5-147 | ブラッディ | これが、アタシからの頼みだ。 | ||
5-148 | 人狼町長 | ……そ、それは、人里に住む若者のことでしょうか? | ||
5-149 | ブラッディ | 知ってるのか? | ||
5-150 | 人狼町長 | はい。前々から人間の男と会っているのは知っていましたが―― ど、どういたしましょう、ひ、姫様? | ||
5-151 | ニーナ | ブラッディ、我ら人外の者は、 人間とは生きる時間も心的傾向も違う。 それがどういうことを意味するか想像できるか? | ||
5-152 | ブラッディ | できます。アタシ自身がそうだから。 だからこそ解るんです。 スピカ達と出会って、アタシは変われた。 だから、だからこそ。 | ||
5-153 | ニーナ | 町長。だ、そうだ。 | ||
5-154 | 人狼町長 | 姫様。 | ||
5-155 | ニーナ | 魔王の頼みだ。仕方なかろう。 | ||
5-156 | リアン | ニーナ、いいのか? | ||
5-157 | ニーナ | ふっ、かまわんさ。 リアン、私も一度、人間の男を愛したことがあるんだぞ。 | ||
5-158 | リアン | ニーナが。 | ||
5-159 | ニーナ | ああ、そいつは私にこう言ったよ、 『おまえがなんであろうと、燃え上がればなにも見えなくなる、 それが俺の愛だ』とな。 | ||
5-160 | リアン | ……そいつは、もう死んだのか? | ||
5-161 | ニーナ | ピンピンしているよ。 私というものがありながら、今は他の女にご執心だ (笑) | ||
5-162 | リアン | ニーナ、もしかして、それって? | ||
5-163 | ニーナ | ふふ、さあな。 | ||
5-164 | [リアン] | 私はそれが誰なのか、解った気がしたが 口に出すのは止めにした。 茶番劇が終わって、 私たちは新たな《婚礼の儀》を無事に終わらせた。 スピカたちは、儀式には参加せず、 夜が更けきる前に来た道を帰ると言って城を出た。 | ||
(BGM) | (「星に祈りを」終了) | |||
(ジングル) | (「Runaway」) | |||
6-1 | ミサキ | さて、とりあえずは 丸く収まったようでなにより、 彼女たちの冒険はここまでです。 それでは 《第六章 少女たちの帰る場所》 | ||
(ジングル) | (「Fight oh!!」) | |||
(BGM) | (「星の輝きの下で」開始) | |||
6-2 | クロエ | レイワさんを起こしてきたよ。 事情も記憶層にインストール しといた。 | ||
6-3 | ブラッディ | おまえってなんでもできるんだな。 | ||
6-4 | クロエ | なんでもはできない。できることだけ。 | ||
6-5 | レイワ | スピカ、ありがとう。 | ||
6-6 | スピカ | ボクよりブラッディにだろ。 | ||
6-7 | レイワ | 魔王さま、ありがとうございます。 さっき、姫様と父上からも聞きました、ジェイソンとのこと。 | ||
6-8 | ブラッディ | 幸せになりなよ。 それより、みんなにも礼を言っときな。 | ||
6-9 | レイワ | みなさん、ほんとにありがとう。 | ||
6-10 | ちゆり | ジェイソン君が浮気なんかしたら、とっちめてあげるから、 この女神さまに連絡するのよ。 | ||
6-11 | クロエ | 元気でね。 | ||
6-12 | 時雨 | せんぱーい! もう、帰るん? | ||
6-13 | スピカ | 時雨とリンダ。ああ、なんか疲れたからな。 | ||
6-14 | リンダ | 少尉、ソロモンの守護神として、 儀式の参加を頼まれていたじゃないの? それに泊まっていけって少佐にも言われていたのに、 もう帰っちゃうのかしら。 | ||
6-15 | スピカ | それだよ。それがめんどくさいんだよな。 どうせニーナ少佐のことだから、 バカ大佐の悪口を散々聞かされるのなんてごめんだよ、 あ〜ウザい。 | ||
6-16 | ちゆり | そうなんだ。 | ||
6-17 | スピカ | そっ、あの二人、昔っから、仲が悪いんだよ。 | ||
6-18 | ブラッディ | おーい、スピカ! おいてくぞー。 | ||
6-19 | レイワ | ありがとう、スピカ。 | ||
6-20 | スピカ | またな。 | ||
6-21 | [ちゆり] | そして、私たちはもと来た道を 歩いて、町の外に出ました。 もおぉ〜、ほんとは泊まって いきたかったのに! なんで暗い山道を歩いて 帰らなきゃなんないのよ! はぁー、クロエが言うには、 もといた時間に帰るには 同じ場所じゃなきゃいけないみたいなんです。 | ||
6-22 | クロエ | あっ、思い出した! | ||
6-23 | ブラッディ | なんだよ? | ||
6-24 | クロエ | レイワさんのことなんだけどね。人間にできるんだった。 | ||
6-25 | ブラッディ | ほんとうか? | ||
6-26 | スピカ | なんだよそれ? | ||
6-27 | クロエ | 正確には、オオカミになれなくして 人間の寿命を与えるって感じかな。 鹿名時雨ってネクロマンサーがいたでしょ。 あの子の魔術とブラッディの血液があれば可能なんだよね。 | ||
6-28 | ブラッディ | 赤き石でか? | ||
6-29 | クロエ | そう、ブラッディは知らないかも なんだけど、 赤き石はね、別名《賢者の石》 そして《エリクサー》って 呼ばれてて、 それを触媒に人間を不老不死にする 力があるのね。 それを行うのには、かなり高等な魔術が必要なんだけど、 鹿名時雨ならできる。 で、鹿名時雨がそれ≠やっちゃうと、 自動的にマミルカの呪いがレイワさんにかかっちゃうんだ。 すると人間が不老不死になる反対版になっちゃうんだよ。 | ||
6-30 | スピカ | 呪い? 聖宝マミルカのか、 あいつにそんなことできるのか? | ||
6-31 | クロエ | できる。鹿名時雨はマミルカの呪いを受けた、 この世界、唯一の存在だからね。 それにマミルカにすごく嫌われてるからね。 | ||
6-32 | ブラッディ | よくわからんが、その時が来れば、 そうしてやったらいいんじゃないか。 | ||
6-33 | ちゆり | そうね、レイワさんもジェイソンさんも、 二人ともまだ若いんだし、男の人からしてみれば、 奥さんがいつまでも若くてピチピチのほうがいいんだから。 | ||
6-34 | スピカ | ちゆりってば、発想がオヤジだなー。 | ||
6-35 | クロエ | さて、みんなどうする? 13日の金曜日に戻る? | ||
6-36 | ちゆり | まだ山の頂上じゃない? | ||
6-37 | クロエ | あれあれ。あの木、なんの木? | ||
6-38 | スピカ | バス停の入口があった大木か? | ||
6-39 | クロエ | そう、川を下らなくても、 あの木の扉から聖バレンシア女子学院に帰れる気がする。 今現在、あたしたちを想ってくれてるつくねたちがいれば、 扉の先はバス停じゃなくて、 14日の土曜日の今の時間だと思うんだけどな。 | ||
6-40 | スピカ | ほんとかよ……まあ、試してみるか。 | ||
6-41 | ブラッディ | そうだな……アタシはあの人、ニーナさんにも逢えたし、 レイワたちのことも忘れるのは嫌だから 14日の土曜日、今日でいいよ。 | ||
6-42 | ちゆり | ええ〜、過去に戻って実験したみたくないの?! | ||
6-43 | スピカ | ボクも今日でいいかな。 | ||
6-44 | ちゆり | ええ〜、スピカまで、なに言ってんのよー。 | ||
6-45 | クロエ | じゃあ、ちゆりだけ13日の金曜日に戻る? | ||
6-46 | ちゆり | って、なんで私だけなのよ! | ||
6-47 | スピカ ブラッディ クロエ | (笑) | ||
6-48 | スピカ | んじゃ、帰ろうか。 | ||
6-49 | [ちゆり] | そして、クロエが大木に触れると昼間の扉が現れました。 それ≠ノブラッディが魔法陣を描きました。 スピカがゆっくりと扉を開くと。 | ||
6-50 | 美弥 | あっ、帰ってきた。 | ||
6-51 | スピカ | おっ、みんな居んじゃん。 | ||
6-52 | クロエ | ただいまぁ。 | ||
6-53 | いよ 咲希 | おかえり (おかえりもぉー)。 | ||
6-54 | ブラッディ | どうして? みんな? | ||
6-55 | つくね | 今日はお月見、焼き鳥大吉上牧店出張バーベキューっちゃ。 | ||
6-56 | ちゆり | みんなぁ〜、心配かけたわね。 | ||
6-57 | つくね | 別に心配はしとらんばってん、 ちゆりたち抜きのお月見ナイトなんて面白かなか。 今夜は仕切り直したい。 | ||
6-58 | ソフィー | もう、みなさん心配かけさせないでくださいよ〜 (笑) | ||
6-59 | [ちゆり] | やっぱり友達って最高です。 そしてみんなで満月の下、 バーベキューを楽しみました。 おわり。 | ||
6-60 | スピカ | ……なんか? 忘れてないか? | ||
6-61 | ミサキ | おっと、これは失敬、 完全に忘れていました。 ジェイソン君ですが、 一晩中、バス停でスピカたちを 待っていたようですね…… そして、山頂から零れる 淡いピンク色の光に包まれだした ジェイソン君の目の前に、 人狼の里へと繋がる不思議な魔法陣が現れたかと思うと…… 朝日に照らされた…… | ||
6-62 | レイワ | ジェイソン…… | ||
6-63 | ジェイソン | レイワ、大丈夫だったのか? 魔王、あいつらは? | ||
(BGM) | (「星の輝きの下で」終了) | |||
(BGM) | (エンディング「Love Song For You」開始) | |||
6-64 | レイワ | 私を助けてくれて、帰っていったわ。 | ||
6-65 | ジェイソン | ……そうか……レイワ、 これからはずっと、ずっと俺と一緒にいてくれ。 | ||
6-66 | レイワ | ありがとう……うれしい…… |
サブライブ!ペガ!! Vol.4 の公開アフレコのタイミングの参考にするために作成された
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