時間セリフNo.人物セリフ備考
(BGM)(「Magna」開始〜終了)
(BGM)(「水鏡」開始)
0:001-1ミサキ再び登場の熊野娘道譚(くまのこどうたん)
ストーリーテラー? とでも
言いましょうか、
「ヤタ・ミサキ」です。
さて、熊野娘道譚の主人公
藤代(ふじしろ)すみれ」とは縁ある
スピカさんの学園冒険活劇の司会を務めさせていただきますので
どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、只今より《大和まほろば奇鬼妖神(ききようじん) 人狼の里 編》
開幕にございます。
1-2[ちゆり]私の名前は真田ちゆり、
聖バレンシア女子学院に通う
普通の女子高校生、じゃないわね。
ちょっと不思議な力を持った
少女って設定です。
まあ、それはさておき、
今回のお話の主役は、
残念だけど私でもスピカでもないのよね。
私的(わたしてき)には、S・ブラッドストーン、通称ブラッディの秘密が
明らかにされるってところからして、
ブラッディなんじゃないかしら (笑)
(BGM)(「水鏡」終了)
(ジングル)(「Runaway」)
1-3ミサキ《第一章 十三日の金曜日》
ここは、聖バレンシア女子学院の中、
何年生なのかは設定されて
いませんが、A組の教室内、
四時間目の授業が終わり、
ここから物語は始まるのです。
(ジングル)(「Fight oh!!」)
(SE)――♪キンコンカンコーン
(BGM)(「カラフルリボン」開始)
1-4女教師はい、今日の授業はここまでです。
それでは皆さん、
午後からの専門課程の授業は
ありませんので、
お昼ごはんを食べたら、
各班に分かれて、
イベントの設営準備に(いそ)しむように。
それじゃ学級委員長のつくねさん、後は頼みますね。
1-5つくね了解です。――起立! 先生に注目! 礼!
1-6生徒全員ありがとうございました。
1-7つくねそれじゃーみんな、
待ちに待ってました、
(セント)バレンシア女子学院
恒例イベント、
お月見ナイトは今夜やけん、
盛り上がっていくばーい!
1-8生徒全員イェーイ。
1-9生徒Aだけど、委員長、
今日は、13日の金曜日だからなんかヤバくない? (笑)
1-10生徒B(笑) ジェイソンとか、現れたりして。
1-11つくねほんに、今年の中秋の名月はスリルのある日付になったばい。
せやから、よけいにテンション上がるバイ!
1-12生徒全員(笑)
1-13[ちゆり](笑) ってわけで、今夜はいろいろと盛り上がりそうね (笑)
そして、私たちは設営準備のために
班ごとに分かれて行動することになりました。
1-14スピカなあなあ、つくねー。
1-15つくねなんや? スピカ?
1-16スピカボクの班ってさ、ちゆりの他に誰が()んの?
1-17つくねあっ、そうか。
スピカとちゆりは、班決めの時、スペインに行ってたんやな。
1-18スピカだね。
1-19つくねB組のブラッディと
C組に転校してきてた
クロエちゃんやな。
1-20スピカえっ? 四人だけなの?
1-21つくねウチが知ってるのはそんだけやけど。
あと何人かはおるやろな。
せや、スピカらは、校庭の設置準備やなくて、
自然庭園のゴミ拾いやで (笑)
1-22スピカはぁ〜? なんでボクたちだけ掃除係なんだよ!
1-23つくね学校、休んでたからな。
みんなが嫌がる、余り(もん)しかなかったんやけど (笑)
1-24スピカ……マジかよ。
1-25[ちゆり]まあ、仕方がない結果なんですけど (笑)
そして、昼食の後、私は不貞腐(ふてくさ)れるスピカを連れて
学院内にある自然庭園に向かうことにしました。
(BGM)(「カラフルリボン」終了)
1-26ナレーターA【場所は変わって自然庭園にて】
(BGM)(「お出かけ日和」開始)
1-27スピカあっ、ソフィーらも()んじゃんか。
1-28ブラッディおっ、スピカたちが来た来た。
1-29スピカジーク・ジオン!
1-30ちゆりみんな、お待たせ。
1-31ブラッディこれで全員だね。
それじゃ、二人一組に分かれて、ちゃっちゃと済ませるか。
とりあえず、アタシとクロエは滝の周りの遊歩道、
咲希(さき)といよのボインコンビは、噴水と藤棚の周りな。
1-32咲希ラジャー!
1-33いよわかった……
けど、ボインって、ブラッディには言われたくないな……
1-34ブラッディんで、ソフィーと美弥(みや)のスナイパーコンビは
森の遊歩道を頼むよ。
1-35ソフィーAll right!
1-36美弥了解した。
1-37ブラッディで、スピカとちゆりっと。
1-38スピカOk! かしこまりジュリアーノ〜。
1-39ちゆりりょうかーい。
1-40ブラッディそれじゃ、始めようか。
スピカたちは滝の所から川岸を下って行ってくれ。
1-41スピカおっ、ラッキー!
1-42[ちゆり]なぜ、スピカが『ラッキー』って言ったのか、
実は、この聖バレンシア女子学院にある自然庭園は
人工的に作られた物ではなくて、
ある種の魔法技術を用いた現実空間なの。
って、解りやすくいうと、
人も踏み入らない山奥の実際にある場所の一部分を
空間ごと切り取って学院内に移植してあるんです。
まあ、それは普通の生徒や先生が知らないことなんですけどね。
だから、きっとスピカ(てき)には、
山奥の川沿いだから涼しいって思ったんじゃないかしら。
私も、そのはずだったんだけど、さんさんと照りつける太陽が、
川面(かわも)に反射して眩しいくらいの川岸を、
上流から下流に向かって歩いていました。
(BGM)(「お出かけ日和」終了)
(SE)(川辺の音 開始)
1-43スピカ暑いな〜、カンカン照りじゃんか。
なあ、ちゆりー、
こんな山奥の川にゴミなんて
あるわけないじゃん。
1-44ちゆりほんと暑いわね。
これじゃ遊歩道の方が木陰もあってよかったかもね (笑)
――ってスピカ、あれっ!?
1-45スピカうん? あれって?
1-46[ちゆり]私たちの十メートルほど先に!
見つけたくないモノが目に入ったのです。
そして思ったとおりのモノが川岸にありました。
――それは、白い体毛をびっしょりと濡らし横たわる、
二匹の小型犬だったのです。
(BGM)(「華舞」開始)
1-47スピカ……犬の死体か。
1-48ちゆり……かわいそう。
1-49スピカたぶん、上流から流されてきた野犬の子供だな。
1-50ちゆりどうしよう、スピカ。
1-51スピカこのままにはしとけないし、
もう一度、川に流すしかないだろ。
1-52ちゆりえっ? 埋めてあげないの。
1-53スピカ埋めるったってなー。
1-54ちゆり川に流すのなんてかわいそうよ。
1-55スピカかわいそうって、もう死んでんだしなー。
1-56[ちゆり]私はスピカの言うことを聞かずに
この子たちを埋めてあげようと思い、
小さい方の一匹を抱き(かか)えました。
1-57スピカおいおい、ちゆり、なにしてんだよ!
1-58ちゆり……だって……。
――って、スピカ!
この子、まだ生きてるわよ!
1-59スピカ!? マジか? こっちのは?
こいつも少しだけど心臓は動いてるっぽい!
1-60ちゆりでも全然動かない! どうしよう! スピカ!?
1-61スピカ……クロエだ!
あいつならなんとかできるんじゃないか!
1-62[ちゆり]そして、私とスピカは二匹の犬を抱き抱えて
クロエの所まで一目散に走りました。
(BGM)(「華舞」終了)
(SE)(川辺の音 終了)
1-63ナレーターA【場所は変わって
 滝の周りの遊歩道にて】
(BGM)(「危機的状況」開始)
1-64スピカおーい! クロエー!
1-65ブラッディあ〜? なんだあいつら?
1-66スピカ ブラッディ、クロエは?
1-67ブラッディって、スピカ! なに抱えてんのよ?!
1-68スピカ見りゃわかんだろ、クロエは?
1-69ちゆりはぁーはぁー、クロエはどこ?
1-70ブラッディって、おいおい、ちゆりまで。
1-71クロエどうしたの、スピカ?
1-72スピカあっ、クロエ!
この犬、動かないんだ、死にかけてんだよ!
ヒールできないか!
1-73ちゆりお願い! クロエ!
1-74クロエ……あっ、ほんとだ、この子ら、死にかけてるね。
ヒールはべつにできるけど――
スピカ……これ犬じゃないよ。
1-75スピカはぁ?
1-76クロエこの子たち、犬じゃなくて、オオカミよ。
それに普通のオオカミじゃない。
1-77スピカ
ちゆり
ブラッディ
オオカミ!?
(BGM)(「危機的状況」終了)
(BGM)(「クレマチス」開始)
1-78[ちゆり]驚いている私たちを他所目(よそめ)
クロエが二匹のお腹を(さす)ると
前足と後ろ足をバタつかせたあと、
閉じられていた目が
スッと(ひら)きました。
1-79ブラッディおっ、生き返った。
1-80[ちゆり]スピカに抱かれていた子が激しく暴れて地面に降り立つと、
何かを探しているような素振りでくるくるとその場を回り、
私の胸に抱かれた子犬を見つけると、
私に向かって威嚇の姿勢を取りました。
1-81スピカ()ってーなコイツ!
1-82ちゆり大丈夫よ、大丈夫だから。
今、この子を下ろしてあげるから。
さあ、お母さんの所に行って……
1-83ブラッディこいつら親子か?
1-84スピカ……兄弟なんじゃね
1-85[ちゆり]二匹は(もつ)れ合うように身を寄せてその場に(うずくま)ると、
(おび)えたような目で私たちを交互に見つめました。
1-86ブラッディなあ、クロエ?
あんたさっきオオカミ? って言ったよね?
1-87クロエうん。この子たち、犬じゃなくて……
オオカミはオオカミだけど、
人狼(じんろう)の子供だよ。
1-88スピカ
ちゆり
ブラッディ
人狼!!
1-89クロエそう。さっき力を回復させたから、
人間の姿になれるはずなんだけど……
人の形にしよっか?
1-90ブラッディんなこと、できるのか?
1-91クロエできるよ――
ピピルマ、ピピルマ、プリリンパ、
パパレホ、パパレホ、ドレミンパ、
オオカミよ、人間になぁーれ。
1-92[ちゆり]著作権と使用権を無視したクロエの呪文で
二匹が二人の人間の子供の姿になりました。
1-93ブラッディ今のセリフ、大丈夫か?
1-94スピカピー入れとけば、いんじゃね。
1-95[ちゆり]こうして人間の姿になった二人に事情を()いた私たちの……
さぶらいぶぺが生アフレコ用の物語が始まるのです。
(BGM)(「クレマチス」終了)
(ジングル)(「Runaway」)
2-1ミサキさてさて、彼女たちに平穏という
言葉は似合わないようですね。
それでは
《第二章 オオカミの姉弟(きょうだい)
に参りましょう。
(ジングル)(「Fight oh!!」)
(BGM)(「夢見の夜」開始)
2-2[ブラッディ]スピカたちが拾ってきたオオカミの
子供は人狼の姉弟(きょうだい)だった。
クロエが、二匹を人間の姿にしてから、
アタシらはこの子たち、
人狼の話を聞くことにしたんだ。
どうやら、お姉ちゃんオオカミは
人間の年齢に見立てると十歳くらいか、
弟オオカミ君は五歳くらいみたいだった。
なぜだか知らないけど、
お姉ちゃんオオカミが、私を凝視してるんだ。
あちゃー……なんかめんどくさいことになりそうだな……
2-3スピカおまえら、どうしてあんな所で死にかけてたんだ?
2-4ちゆりちょっと、スピカ。
2-5ブラッディなあ、お姉ちゃんオオカミ、
ずっとアタシを見てるけど、
アタシになんか付いてるか?
2-6ちゆりブラッディも。
2-7クロエ大丈夫、あたしたちは人間じゃないよ。
2-8[ブラッディ]クロエは、オオカミの姉弟に
そう言うと、
人間の姿から山猫の姿に
変化(へんげ)して見せた。
2-9人狼姉! 化け猫……
2-10ちゆりそうよ。だから安心して。
2-11人狼姉……そしたら、そこの赤い髪の女が化け猫の女王なのか。
2-12ブラッディアタシのことか?
2-13人狼姉……なにか怖いくらいの、ものすごい妖力を感じる。
2-14ブラッディ(笑) 女王か、嬉しいけど、化け猫じゃないよ。
アタシは魔族なんだ。
2-15スピカ(笑) たしかに、女王様っぽいよな (笑)
2-16人狼姉魔族の女王……そ、そうか。
そして緑の帽子の、おまえからは山神(やまがみ)さまの匂いがする。
2-17スピカボクかい?
2-18人狼姉そう。
2-19スピカう〜ん? ……なんとなく解るな、ダタラッチのせいか。
――オホン! よくわかったな、オオカミの子供よ。
我は山神の化身、すべてを打ち明けるとよいぞ!
2-20ちゆりちょっとスピカ!
何バカなこと言ってんのよ。
2-21人狼弟それじゃあ、お姉ちゃんは女神さまなの。
2-22ちゆりえっ? わたし?
2-23人狼弟うん。お姉ちゃんに抱かれてるとき、
すごくいい匂いがして、温かくて気持ちがよかった。
2-24ちゆりえ、えーと、そ、そ、そうね私は女神の中の女神よ。
あなたたち姉弟(きょうだい)を助けるために来たんだから。
2-25スピカ(笑) なんだそれ (笑)
2-26ブラッディ……アンタらねー。
(BGM)(「夢見の夜」終了)
(BGM)(「モノクロの夢」開始)
2-27人狼姉お願い、神様! (あね)さまを助けて!
一緒に人狼の里に来て!
2-28ブラッディ
スピカ
ちゆり
(クロエ)
あねさま?(にゃぁ?)
2-29[ブラッディ]どうやら姉弟の話では
満月の日に《婚礼の儀》が執り行なわれるらしく、
姉弟の(あね)さまが無理やり結婚させられようとしているらしい。
そして一族に無理やり連れ去られた。
姉弟は(あね)さまの結婚を()めさせたいと
人狼の里のお(ばば)に相談したそうだ。
お婆が言うには川下にある
人間が作った《(いにしえ)の庭園》という場所に行けば
助けがあると占いに出たそうで、
姉弟は何日もかけて川を下ってきたらしいが、
途中で弟君が川に落ちて
助けに入ったお姉ちゃんもどうやら溺れて
ここまで流されたようだね。
2-30ナレーターB☆ 小説では詳しく、プロローグにて
2-31ちゆりスピカ、助けてあげましょう。
2-32スピカ助けるっていってもなー。
子供の話だし、あちらの事情にそんな簡単に
首つっこんでいいものかどうか。
2-33人狼姉お願いです。
山神さま、(あね)さまを助けてください。
(あね)さまには好きな、ジェイソン(にい)ちゃんがいるんです!
2-34スピカジェイソン兄ちゃん?
2-35人狼姉はい。(あね)さまはジェイソン兄ちゃんと結婚したいんです。
2-36ブラッディちょっと待った。
それじゃあ、(あね)さまってのは、誰と結婚するんだ?
2-37人狼姉知らないけど、ジェイソン兄ちゃんじゃなくて、
外国から来たオオカミ王の子供って言ってました。
2-38ちゆり……ブラッディ、もしかして、
これって、よくある政略結婚なんじゃないの?
2-39ブラッディなんか、それっぽいな。
2-40スピカマンガかよ。やめやめ、
そんなんに首突っ込んだら、
ヤバいって。
2-41ちゆりスピカ。
2-42ブラッディなあ、お姉ちゃん、
そのジェイソン兄ちゃんってのは、どこにいるんだ?
2-43人狼姉人間の街です。
2-44ブラッディ人間の街?
それって、人間として街で暮らしてるってことなのか?
2-45ナレーターB☆ ちゆりの膝の上でおとなしくしていた人狼の弟が
  ちゆりの顔を見上げてにっこりと笑った。
2-46人狼弟人間なんだ。
2-47ちゆりえっ? 人間?
2-48ブラッディ人間って。
2-49スピカでたでた。ほら、めっちゃヤバい展開じゃん。
人間とオオカミ女のロマンスだろ?
無理無理、ぜったい不幸になるだけだって。
2-50ちゆりスピカ!
2-51ナレーターB☆ ちゆりに怒鳴られたスピカはブラッディを見た。
  そして自身の発した言葉の重大性に後悔した。
2-52スピカあっ、ごめん……
2-53ブラッディ気にしてないよ、スピカ。
たしかに応援しがたいってのは正直なところだけど……
なんでかな……アタシが魔族と人間の混血(ハーフ)だからかな、
この子らの力になりたいって……思うんだよ。
2-54ちゆりブラッディ。
(BGM)(「モノクロの夢」終了)
(BGM)(「Sunrise」開始)
2-55スピカ……うなぁぁー!
わかったよ!
しゃーねぇなー、おまえら、
ボクらがなんとかしてやるよ……
って、また大佐に怒られそうだけど。
2-56ブラッディ
ちゆり
スピカ。
2-57人狼姉ほんと! ありがとう、神様!
2-58スピカおい、クロエ、どうする?
2-59ナレーターB☆ スピカに()かれた山猫の姿だったクロエが
  一瞬で人間の姿に戻る。
2-60クロエ面白そうだから、やってみるのもいいかも。
2-61スピカまあ、ネコ(がみ)さまが言うんじゃ、やるっきゃないよな。
決まりだな。
で、どうする?
2-62ナレーターB☆ クロエが行き止まりのはずの
小さな滝を指さした。
2-63クロエこのまま川を上って行けば、
そう時間もかからずに人狼の里に着くよ。
2-64スピカいやいや、そりゃ無理だろう。
こいつら、ここに来るまで何日もかかったんだろ。
それに、ここ一応行き止まりみたいに作ってあるし、
結界の向こうには行けないじゃん。
2-65クロエ大丈夫だよ。
この子たちはただオオカミ側が作った
特殊結界の中を彷徨(さまよ)ってただけだし。
川に落ちた時点でそれが解消されただけ。
あたしにも学院側のこの強力な結界は破れないけど、
ブラッディの魔法なら大丈夫だと思う。
2-66ブラッディアタシの魔法が?
2-67クロエこの結界には、魔族の力が大きく関与してる。
おそらく作ったのは人間の魔法使いが知ってる術式じゃない。
(いにしえ)の魔族だと思う。
ブラッディの術式にはそれに該当する悪魔文字が
多数あるのは知ってたから、きっと大丈夫。
2-68スピカクロエ、おまえって、なんでも知ってんだな。
2-69クロエそんなことない、知ってることだけ。
2-70スピカんじゃ、今から行きますか。
2-71ちゆり今からって、準備とかいろいろしないと。
2-72スピカ軍人たるもの、緊急出動なんて当たり前じゃん。
2-73ちゆり私は軍人じゃないし、それに学校はどうするのよ。
2-74スピカまあまあ。
なあ、クロエ、おまえなら時間(タイム)修正(コレクション)はできるんだろ?
2-75クロエできる。
そもそもこの学院自体が特殊な結界の中にある。
通常世界の時間軸とは別の存在だから全然可能。
人間には無理だけどあたしなら可能。
2-76スピカほらな。
2-77ちゆりだったら、用意してからでも遅くないじゃない。
2-78ブラッディそうだよスピカ、
作戦を立てて、みんなにも協力してもらおう。
2-79スピカノンノンノン。
二人ともわかってないなー。
2-80ちゆり
ブラッディ
なにが?
(BGM)(「Sunrise」終了)
(BGM)(「Steep Out」開始)
2-81ナレーターB☆ スピカは左手首に巻かれた
  大き目のミリタリーウォッチを
  チラッと見ると、
  右の(てのひら)(ひさし)を作るようにして、
  真上の太陽を仰ぎ見た。
2-82スピカ14時半か……
ブラッディ、気づいてないか?
2-83ブラッディなにが?
2-84スピカ太陽の位置だよ。
こいつらを見つけてからの、この一時間あまり、
太陽が動いてない。
というか動いてはいるんだけど、
一時間前の高さのままなんだ。
2-85ブラッディえっ? どういうことスピカ?
2-86スピカこいつらを見つけた時点で、ボクらの時間軸が
こいつらの世界の時間軸に切り替わってるんだよ。
まあ、解りやすくいえばすでに平行世界にいるってことさ。
だよな、クロエ?
2-87クロエそうなる。
もとの時間軸の世界に戻ることも可能だけど、
人狼たちとは会わなかったことになる。
スピカたちの場合は普通の人間じゃないから
記憶は残るかもしれないけど保障はできない。
2-88スピカで、今日は何日だと思う、ちゆり?
2-89ちゆり13日の金曜日、じゃないの?
2-90スピカだったら余裕もあったんだろうけど、
太陽の高さからすると、たぶん次の日の14日の土曜日、
オオカミたちの好む、ほんとの満月が上る日だと思う。
ってことは、もう、時間がないってことだよ。
2-91ちゆりそれじゃ、スピカ、私たちは未来にいるってことなの?
2-92スピカに、なるのかな? クロエ?
2-93クロエそうとは言えないし、そうとも言える。
2-94ブラッディならアタシたちが昨日に戻って、
もし今の記憶が残っていたら、
そっちの方が都合がいいんじゃないのか?
2-95クロエだから保障できない。
2-96ブラッディクロエが覚えていたらいいんじゃないのか?
2-97クロエそれもどうなるか解らない。
2-98スピカなっ、だから今からやるんだよ。
2-99ちゆりねえ、クロエ、質問なんだけど、
アニメとかであるじゃない、
昨日に戻って、未来の自分たちを
陰から助けるみたいな、こともできるの?
2-100スピカちゆりってば、ま〜た、面白がってんな。
2-101ちゆり違うわよ! 失敗しないようによ!
2-102クロエちゆり、アニメじゃないから、それは無理かも。
同一世界、同じ時間軸の中では記憶を共有できる
複数個体の存在は許されないから、
肉体としては存在できても目的意識は別のものになる。
2-103ブラッディもし、アタシらに会えても、意味を成さないってことか?
2-104クロエおそらく、会えない。そんな話はアニメだけ。
2-105ちゆりそれじゃ、明日の、じゃない
今日の時間の私たちはどうしてるのよ?
2-106クロエここ、この時間にいる。
2-107ちゆりどういうこと? パッと消えてたりするの。
2-108クロエ消えない。今が明日だから。
2-109ブラッディ訳が解らん。
2-110スピカって、ちゆりもブラッディも脱線しすぎなんだよ。
んなこと昨日に戻って明日になれば解るじゃん。
とにかく、今はこいつらの(あね)さまをどうにかするために、
殴り込みをかけようぜ。
2-111[ブラッディ]そしてアタシは
クロエに言われたとおり、
なんの変哲もない
空間防御結界解除の魔法陣を作った。
こんなので大丈夫かと思ったけど、
魔法陣を通り抜けると、
行き止まりのはずの滝の向こうには
延々と果てしなく小川が続いていた。
(BGM)(「Steep Out」終了)
(ジングル)(「Runaway」)
3-1ミサキおやおや、彼女たちは
なんて冒険好きなんでしょうね。
それでは
《第三章 ジェイソンの覚悟》
に参りましょうか。
(ジングル)(「Fight oh!!」)
(BGM)(「ブラインド」開始)
3-2[スピカ]ボクらが、犬、じゃなかった
オオカミの姉弟を見つけたころ、
ソフィーたちは今回の異変に
気付いたみたいだった。
3-3ナレーターA【場所は変わって森の遊歩道にて】
3-4ソフィー! 今、なにか感じなかった、美弥?
3-5美弥たぶん、空間が一瞬、歪曲した。
3-6ナレーターB☆ 木々の枝を飛び渡りながら天草いよが来る。
3-7いよおーい、今、変な妖力を感じたんだけど。
3-8ナレーターB☆ 天草いよにおぶさっていた海藤咲希が地面に降り立つ。
3-9咲希よいしょっと、知ってる魔力が四つ消えたみたいだね。
3-10ソフィースピカ、たちね?
3-11咲希間違いないね。
3-12ソフィー咲希、どのへんに空間異常を感じる?
3-13咲希ちょっと待って。――小川全体とその遊歩道にかけて? かな。
3-14ソフィー美弥、マクロフォディアで見れる?
3-15美弥今やってる。
スピカ、ちゆり、ブラッディ、クロエの四人の姿が……
学院内のどこにもない……
(BGM)(「ブラインド」終了)
(BGM)(「深い森」開始)
3-16ナレーターA【場所は変わって
 小川沿いの山中にて】
3-17[スピカ]そのころ、ってそのころになるのか?
ああ、次の日のほうが適切だね (笑)
ボクらは人狼の里に向かって川を(のぼ)っていた。
3-18ちゆりまだ着かないのー?
3-19スピカ(あち)いぃー!
なあ、オマエら、もう、一時間近く歩いてんだけど、
いつになったら着くんだよ。
3-20人狼姉もうすぐ、あの滝の向こう。
3-21スピカはあ? 滝? そんなのどこにあるんだよ?
3-22ちゆりはぁはぁ、滝なんてないじゃない。
3-23スピカブラッディ、ちょっと飛んで見てきてよ。
3-24ブラッディそうだな。斥候してくるか。
ブラッディーウィーング!
3-25スピカいちいち叫ぶなよ。
3-26ナレーターB☆ ブラッディは川上を目指して飛んでいった。
  しばらくして、遠くからブラッディの大声が聞こえた。
3-27ブラッディス、スピカー!!
(BGM)(「深い森」終了)
(BGM)(「広がる世界」開始)
3-28[スピカ]ボクらは空中に浮かぶ
ブラッディの足元にまで着いたとき、
驚愕を隠せないでいた。
目の前には大空が広がり、
今まで隣を流れていた川はなくなり、
ボクらの足元には数百メートルにも
及ぶ高さの滝が現れた。
そう滝、ボクらは断崖の頂上にいたんだ。
そして眼下に広がる異様な町並みに言葉を失うしかなかった。
3-29ちゆりなに?! ここ!! スゴーい!!
3-30クロエすごい所に来たかも。
3-31スピカまてまてまて、ウソだろ!
3-32ブラッディこれは、たまげたなー。
3-33[スピカ]川がいきなり逆流?
そして大きな滝に?
いやいやそれはよくないけど、
いいとして……
異質極まりないのが、町並みだった。
日本にあるべくもない、
それはアニメに出てくるような
ファンタジー世界によくある中世の町並みだった。
それに、それに、なに! あのでっかい城はぁぁぁー。
(BGM)(「広がる世界」終了)
(BGM)(「異国の風」開始)
3-33B[スピカ]その時だった。
人狼の姉弟がなにかに反応して
走り出した。
3-34ジェイソン――『レイワ、レイワ』
3-35人狼姉あっ、あの声……聞こえる……
ジェイソン兄ちゃんの声、(あね)さまを呼んでる。
3-36人狼弟ジェイソン兄ちゃんだ!
3-37ナレーターB☆ 森の中を駆け出す人狼の姉弟。
3-38ちゆりど、どうしたの!? あなたたち、どこ行くの!
3-39スピカブラッディ!
3-40ブラッディああ、追っかける!
3-41[スピカ]そしてボクらも人狼姉弟の後を追ったんだ。
3-42スピカどうしたんだよ、おまえら?
3-43ちゆりどうしたの、あなたたち?
3-44人狼姉この向こうから、この木の中から、
ジェイソン兄ちゃんの
声が聞こえるの。
3-45ブラッディずっと、森が続いてるだけだぞ。
3-46ナレーターB☆ クロエが大木に手を触れた。
3-47クロエ木の中からか。う〜ん。これかな?
3-48ちゆりなに!? 大木に扉が現れた。
3-49クロエよっと、あれ?
押してダメなら引いてみろと、あれ?
(ひら)かないな。
3-50スピカなんで? こんなとこに扉があるんだよ。
3-51ちゆりもしかして、街まで降りるエレベーターだったりして。
3-52クロエブラッディー、ちょいちょい。
ここにさっきの魔法陣をピンストライプしてみてよ。
3-53ブラッディああ、ブラッディー・ピンストライプ魔法陣!
3-54スピカだから、いちいち叫ぶなっての。
3-55ちゆりあっ、()いた。
3-56[スピカ]すると扉の向こうに
ボクらと同年代くらいのイケメンが立っていた。
人狼の姉弟は素早く扉を通り抜けてイケメンに抱き付いたんだ。
3-57人狼姉弟ジェイソン兄ちゃーん。
3-58スピカ
ちゆり
ブラッディ
ジェイソン?
3-59ナレーターB☆ 空間にいきなり現れた
  魔法陣の中から
  オオカミの姉弟が飛び出してきた。
3-60ジェイソンおまえたち!?
3-61人狼姉弟(あね)さまが、(あね)さまが!
3-62ジェイソンレイワがどうした?
3-63人狼姉(あね)さまが、(あね)さまが結婚させられちゃう。
3-64ジェイソンやっぱりか、
レイワがいつものファミレスに
来ないと思ったら……
クソっ!
3-65スピカおーい、お取り込み中悪いんだけど、
そっちに行ってもいいかなー?
って、こっちの声は聞こえてないか……
3-66ナレーターB☆ スピカたちも扉を通り抜けた。
3-67ジェイソンなんだ! おまえら!?
女子高生? ネコ耳娘に、
その背中の羽、悪魔か!
3-68ブラッディアタシらは、怪しいもんじゃないよ。
その子たちをたまたま助けたんだよ。
3-69ジェイソンいや、じゅうぶん怪しいんだが……
それはいいとして、この子らを助けた?
3-70ブラッディああ、川で死にかけてたところをね。
アンタがジェイソンかい?
見てのとおりアタシらは人間じゃない。
3-71ジェイソン見ればわかる。
俺がジェイソンだ、渾名(あだな)だけど、
おまえらは一体?
3-72人狼姉魔王さまに山神さまなの。
3-73人狼弟それに女神さま。
3-74人狼姉化け猫もいるけど、(あね)さまを助けてくれるの。
3-75ジェイソンま、魔王に神様……
3-76ブラッディ魔王さまね。まあ、そんなところだね。
アタシはブラッディ……で、ここはどこなんだ?
3-77ジェイソン木屋平村(こやだいらそん)瀧宮(たきのみや)神社前の……い、一応、バス停なんだけど。
3-78ブラッディバス停? ここがか?
3-79ジェイソンああ、レイワがいつもここから
バスに乗ってくるって言ってたから、
レイワを捜しに来たんだ。
3-80ちゆりねえ、スピカ、ここって、見覚えない?
3-81スピカ……あるに決まってんだろ。
ウガァー、なんなんだよ、この設定、
ソロモンにあるバス停が人狼の里への出入り口ってか!
この作者、バカにしてんのか!
3-82ちゆりえ〜と。ここって、奈良県じゃないわよね……
徳島県のソロモンよね。
3-83スピカおい! クロエ! これどういうことだよ!
3-84クロエあたしだって、知らないことはある。
(BGM)(「異国の風」終了)
(BGM)(「風の音」開始)
3-85ブラッディスピカ、うるさい。
原作者の設定、そんなことはどうでもいいよ。
なあ、ジェイソンとかいうあんた、
事情はなんとなく解ってるのか?
3-86ジェイソンああ、レイワからは、
なんとなく聞かされていた。
知らない相手と無理やり
結婚させられるって、
そうなれば、もう俺とは
会えなくなるって。
3-87ブラッディレイワって()が、人間じゃないこともか。
3-88ジェイソン……ああ知ってる。
……オオカミだってことも……
3-89ブラッディそうか、なら、話が早い。
もう一度言っとく、アタシは人間じゃない。
そのアタシが言うんだ、心して聞きなよ。
アタシらは、あの子らに頼まれて、
《婚礼の儀》ってやつをブッ潰しに行く。
だけど、アンタのためにやるのにはどうも腑に落ちない。
人間と化け物が幸せになれるなんて話は
おとぎ話でもそうそうあるもんじゃない……
もし仮に、レイワって()があんたを食ってでも一緒になりたい、
愛し合いたいと言ったら、
あんたは黙って食われる覚悟はあるのか。
相手は人間じゃないんだ。住む世界が違う――。
――オマエ≠フ覚悟が知りたい。
3-90ジェイソンお、俺はレイワを愛している。
レイワがそれを望むなら、
俺は食われても構わない――
魔王、《婚礼の儀》を潰してくれ。
その代償として俺の魂をくれてやる。
だから、だから、レイワを自由に、
自由にしてやってくれ、頼む〔泣き〕
3-91スピカおいおいブラッディ、たとえが無茶苦茶だな。
3-92ちゆり……よく言ったわ、ジェイソンさん!
この私、女神中の女神が絶対に、
レイワさんを助けてあげる!
3-93スピカええぇ〜。
3-94ちゆりスピカ、行くわよ!
3-95スピカ……はいはい。
3-96ブラッディジェイソン、アンタの覚悟は解った。
3-97ナレーターB☆ ちゆり、スピカ、ブラッディの三人が
  背中を向けて魔法陣の中に消えていく。
3-98ジェイソンお、俺も連れていってくれ!
3-99クロエ君はこっちの世界でレイワさんを待っていてあげて、
おそらく《婚礼の儀》を潰されたレイワさんは
二度とあっち側では生きていけないと思う。だから――
あっ、それと人間の君じゃ、
どうせ役に立たない足手まといだからね。
まあ、こうなるのは全部、
君がレイワさんを惚れさせたのが原因なんだよ。
君の責任だからちゃんと最後まで面倒みてあげなくちゃね。
3-100スピカ……クロエのやつ、しれっと(とど)め刺すな。
ちゆりに似てきたんじゃないか。
3-101ちゆりなんか言った?
3-102スピカいえいえなにも。
3-103ちゆりじゃあ、いざ! ブラックローゼス特務隊! 出陣よ!!
3-104[スピカ]こうして、ボクらは人狼の姉弟と共に
レイワさんのいる人狼の里を目指したんだ。
(BGM)(「風の音」終了)
(ジングル)(「Runaway」)
4-1ミサキジェイソン君、
なかなかのイケメンでしたね。
と、そんなことより
あのジェイソン君、
なかなか肝が据わった人間ですね。
突然に現れた人狼の里への
魔法陣に驚きもせず、
はたまたブラッディウイングを見ても眉ひとつ動かさなかった。
いったい何者なんでしょうか?
今後、彼が大和まほろば奇鬼妖神シリーズに
どう関わっていくのかは今後のお楽しみとしましょう。
それでは、《第四章 邂逅》の始まりです。
(ジングル)(「Fight oh!!」)
(BGM)(「ひみつ基地」開始)
4-2[ちゆり]私たちは不思議なくらいすんなりと
人狼の里に入ることができました。
アニメのように大きな城壁や門が
あるわけではなかったし、
綺麗に整備された石畳の道を
ただ悠然と歩きながら、
だけど一番気がかりだったのは町に人の気配がなかったのです。
4-3ブラッディおまえたち、この町には誰もいないのか?
4-4人狼姉そんなことない。でもなんで誰もいないの?
4-5スピカいやいや、こっちが()いてんだけど。
4-6ちゆりねえ、あなたの(あね)さまの《婚礼の儀》っていうのは、
あのお城でするのかしら?
4-7人狼姉よく知らないけど、たぶん。
4-8クロエ(ばば)っていう人狼の所に行ってみたら。
4-9スピカおっ、それいい考えだな。
なあ、おまえら案内してくれよ。
4-10人狼姉お城にいる。
4-11ブラッディなら、やっぱり城だな。
たいていラスボスとか、それにそういう儀式は
城でやるのが普通だろ。
4-12スピカまあ、おきまりだね。
4-13[ちゆり]と言いながら、なんやかんやで10分もしないうちに
お城に着いちゃいました。
お城の大きな入口の前には、
……すごく、違和感あるんですけど……
何台もの自動車が駐車されていました。
……馬車とかじゃないのね。
4-14スピカおっ! かっけぇー。
まるで四駆(よんく)の展示会場みたいだな。
あっ、ランボルギーニLM002じゃん!
かっけぇえー。
4-15[ちゆり]スピカが指さした真っ赤な四輪駆動車(よんりんくどうしゃ)の運転席のドアが開き、
一人の女性が降りてきました。
4-16スピカあいつは!? リンダ・ファーイ!
(BGM)(「ひみつ基地」終了)
(BGM)(「ボス登場」開始)
4-17リンダ鉄拳(てっけん)? なぜここに?
4-18[ちゆり]そして、助手席からも見知った人物が現れました。
4-19時雨どうしたん? あれ? スピカ先輩やん。
4-20スピカ
ちゆり
鹿名(かな)時雨(しぐれ)
4-21ブラッディおまえら、あいつら知り合いなのか?
4-22クロエちなみに、あたしも知ってる。
4-23スピカああ、ちょっとスペインでね。
4-24[ちゆり]それから、後部座席の両扉が開き
二人の人物が降り立ちました。
4-25スピカジリンスカス少佐にリアン!?
4-26ちゆりうわぁー、すごく綺麗な人ね。
4-27ブラッディあの人は!?
4-28[ブラッディ]アタシの目はその女性に釘付けにされた。
太陽の光を眩しく反射させる美しい銀色の長い髪に、
すべてを見透かすような、妖しく輝く琥珀(こはく)色の瞳の女性に。
アタシは覚えている。
十年前、アタシをあの地獄から救い出してくれた
あの人のことを。
4-29スピカブラッディ? ジリンスカス少佐を知ってるのか?
4-30ブラッディあ、ああ、あんまり昔のことは覚えてないんだけど、
あの人のことだけは、はっきりと覚えてる。
アタシはあの人に助けられたんだ。
4-31スピカ助けられた?
って、まさか十年前の妖怪大戦争の時のか!
4-32ニーナあれは? スピカ・スカイユ。
――うん? それにあの(むすめ)……
魔王サテライヤの忘れ形見か?
4-33ちゆりスピカ、こっちに来るわ。
4-34[ブラッディ]あの人が、あの人が近づいてくる……
アタシの目の前に……。
4-35ニーナ……大きくなったわね。
私のこと、覚えているかしら?
4-36ブラッディあ、あ、あの……覚えています……
あの時は……助けてくれてありがとう。
4-37ニーナフフフ、どういたしまして。
4-38スピカそれより、なんで少佐たちがここにいるんですか?
4-39ニーナスピカ、おまえこそ、それは、私が()きたいんだが。
4-40スピカえ、えーと、ソロモンの監視任務中……
4-41ちゆりあ、あの私たち、この子たちのお(ねえ)さんの友人で、
結婚式に呼ばれたんです。
4-42スピカお、おい、ちゆり。
4-43ニーナ結婚式? フッ、――そうか。
――スピカ、事情はよく解らんが騒ぎは起こすなよ。
4-44スピカあ、は、はい……
4-45[ブラッディ]そう言って、あの人《ジリンスカス少佐》は、
城の入口へ向かっていく。
入れ替わりにスピカたちがスペインで会ったという二人の女が
こちらにやってきた。
(BGM)(「ボス登場」終了)
(BGM)(「Scirocco」開始)
4-46時雨先輩、久しぶりやね〜。
こんな所でなにしてるん?
4-47リンダ……スピカ少尉、あの()は、ついなちゃんは元気かしら。
4-48[ブラッディ]ピンポンパンポーン♪
この二人《鹿名時雨とリンダ・ファーイ》については、
ボイスドラマ《鬼っ子ハンターついなちゃん第32話》での
ゲスト主人公なんで
ついなちゃんのボイスドラマを聴いてくれれば解るぞ。
4-49スピカああ、ついなちゃんは元気だよ。
で、おまえらがなんでここにいるんだよ?
4-50時雨うちらは、ニーナ少佐の護衛任務かな。
日本は久しぶりや言うてな。
まあ、うちも日本は何十年ぶりやから。
ところで先輩は、なんでこんな所におるん?
4-51リンダ時雨、そういえばここはソロモンだったわね。
ということは少尉の管轄だから、いても不思議じゃないわよ。
4-52時雨ふーん。
4-53スピカ……そ、そういうことだよ。
4-54時雨ふーん、ほんなら、先輩、また後でな。
4-55リンダあっ、そうそうスピカ少尉、
これをついなちゃんに渡しておいてくれないかしら、
逢うことはないと思っていたんだけど。
4-56スピカこれは?
4-57リンダスペインのおみやげ、
山猫クロエのペンダント、お守りよ。
市販の物だけど、
こちらで少しばかり魔除けの術式を施してあるの、
逢えるなんて思ってもいないのに、なぜかしらね、
日本に行くって決まったらあの()にあげたいと思ってね……
余計なお世話だったら少尉が捨てておいて、それじゃあね。
4-58スピカちっ……捨てれるわけないじゃん〔小声〕
4-59クロエあたしはここにいるんだけどな。
4-60[ブラッディ]そしてアタシらは、
あの人ニーナ・ジリンスカス少佐たちとは別に、
人狼の姉弟と城の裏口から城内に入ることになったんだ。
当初の目的では人狼のお婆に会って
事情を訊くはずだったんだけど、
姉弟達に連れられて入った部屋には、
(あね)さまと呼ばれるレイワって()がいたんだ。
(BGM)(「Scirocco」終了)
(BGM)(「白昼夢」開始)
4-61ナレーターA【場所は変わって
  城内のレイワの寝室にて】
4-62人狼姉弟(あね)さまー。
4-63レイワあなたたち!
どこに行っていたの、心配したのよ!
4-64人狼姉神様たちを連れてきたよ。
(あね)さまを助けてくれるの。
4-65レイワ神様? 助ける?
4-66ちゆりあなたが、この子たちの(あね)さま?
4-67レイワ!? なに! あなたたちは!
4-68スピカボクらは、こいつらが川辺(かわべ)で弱ってたところを助けたんだ。
そしてあんたの事情を聞いてね。
こいつらに頼まれて
《婚礼の儀》ってやつをぶっ壊しにきたんだ。
4-69レイワどういうこと?
4-70ちゆりあなたが無理やりに結婚させられるって聞いたのよ。
4-71ブラッディその儀式を()めさせる。
4-72クロエあたしたち事情はよく解ってないんで、
詳しく教えてくれない?
4-73レイワ……あなたたちは、
自分たちの部屋に戻ってなさい。
わたしは神様たちと
大事なお話があるの。
4-74人狼姉(あね)さま〔心配そうに〕
4-75レイワありがとう、神様たちを連れてきてくれて、
大丈夫だから、ね、お願い。
4-76人狼姉うん、解った〔渋々〕
4-77レイワ……あなたたちが何者かは
知らないけど、
ここ人狼の里に来られたってことは
普通の人間じゃないのね。
……あの子たちを助けてくれて
ありがとう。
それにあの子たちのわがままに付き合ってくれて感謝するわ。
4-78スピカなら、あんたを助けてかまわないんだよな。
4-79レイワ……あなたたち、この町を見て、不思議に思わない?
4-80ちゆりすごい、ファンタジックな町並みね。
4-81スピカ潰れたテーマパークみたいだな。
4-82ブラッディ……生気がまったくない。
4-83レイワ……そう。この町は死にかけているのよ。
4-84スピカ死にかけてる? どういうことだよ?
4-85レイワほかの人たちを見かけた?
4-86クロエほかの人狼とは出会わなかった。
4-87レイワきっと、みんなもう城の大広間に集まっているわ。
それもたかだか30名ほどの老人ばかりよ。
4-88ブラッディお世辞にも広い町とは言えないが、
住んでるのが、それっぽっちとは思えないんだけどな。
(BGM)(「白昼夢」終了)
(BGM)(「セピアの影絵」開始)
4-89レイワこの町はね、大昔に魔族の王が、
人狼たちのために作った場所なの。
昔は何百人も住んでいたそうよ。
だけど時が経つにつれてだんだんと
その数を減らしていったわ。
その理由の一つが……
ここ人狼の里を作ったその魔王が死んでから、
町を維持する魔王の魔力の供給がなくなって、
六十年に一度、人柱をたてて、そう、
乙女の生贄(いけにえ)によって魔力を回復させる儀式が必要になったの。
そんなことまでして、この町にしがみついているのが嫌になった
一族の人狼たちは少しずつ町を捨てていったわ。
4-90ちゆり人柱? 結婚式じゃないの?
4-91レイワ妹たちが、そう言ったのね。
無理もないわ、
子供たちには、本当のことなんて
話せないもの。
4-92ブラッディその生贄ってのがあんたか?
4-93レイワそうね。
4-94ブラッディそれは、どうなる?
4-95レイワ永遠の死を意味するわ。
4-96スピカまてまて、死ぬってことか?
それであんたはいいのか?
4-97レイワ……仕方がないわ。この町を守るためだもの。
4-98ちゆりちょっと、おかしいわそんなの!
素敵な町だけど、30人くらいしか住んでないんでしょ?
4-99スピカそこかよ。
4-100レイワそれでも、わたしたち一族が、
昔からずっと(おこな)ってきたことだから。
私が生まれてきた意味だから。
4-101ちゆりそんなの、そんなのありえないわよ!
4-102スピカちっ……
4-103ブラッディ……レイワ。……アタシらはジェイソンと会った。
4-104レイワ!? 彼と会った!
4-105ブラッディああ、アイツはアタシにこう言った。
アンタを愛してる、アンタを自由にしてやってくれって、
そのためにアタシに命を差し出すってね。
4-106レイワ……ジェイソン〔泣き〕
4-107ブラッディアタシはアイツの覚悟に約束した。
アンタを自由にしてやるって。
4-108レイワそんなの無理よ!
私たち一族の、一族の掟なのよ!
そんなことできるわけないじゃない!!〔泣きながら〕
4-109スピカ掟だー、あんたバカじゃないのか。
そんな理不尽な掟、ボクは認めない。
掟が掟じゃなくなればいいんだろ。
こんな腐れテーマパーク、ボクらの力で……
一瞬で灰にしてやるよ。
4-110ちゆりスピカ!
4-111クロエスピカとちゆりの合わせ技の
雷撃爆裂魔法《ヘヴィメタル》でなら可能だけど、
それはやりすぎかも。
4-112レイワスピカ? ……
4-113スピカじゃあ、どうすんだよ!
4-114ブラッディレイワ、生きてジェイソンに会いたくないのか?
4-115レイワ会いたいわよ! 会いたいわよ!
あの人と一緒に生きていきたいわよ――
でも、どうにもならない!
――わたしだけならいいと思ってる、
だけど次はきっと妹たちの子供が私と同じ運命をたどる!
これは掟なのよ!〔泣きながら〕
4-116スピカだから言ってんだろ!
こんな町、壊してやるって!!
4-117ブラッディうるさい! スピカ!
4-118スピカはぁ〜?
4-119ブラッディそんな単純なことじゃないんだよ、
そんな単純なことじゃ。
4-120クロエまあまあ、二人とも。
二人が熱くなってどうするニャ。
4-121スピカちっ、ニャって、
おまえはあい≠ゥよ。
4-122ちゆりスピカ、落ち着いて。
(BGM)(「セピアの影絵」終了)
(BGM)(「あの日あの時」開始)
4-123クロエとりあえず、《婚礼の儀》は
間違いなく今夜だと思う。
これを逃せば一年後じゃないと
儀式は成立しない。
ってことは、レイワさんが
今夜、人柱にならなければ
この町は崩壊するね。
となると……スピカ、ソロモンへの影響をどう考える。
4-124レイワソロモン? スピカ? ……
4-125スピカソロモンへの影響?
4-126クロエそう、このオオカミの町はソロモンの中にあるんだよ。
この町が消滅すれば、ソロモンの時空バランスが乱れて、
ソロモン自体の結界が壊れかねない。
そうなれば、スピカは困るんじゃないかな。
4-127スピカなら、なんかいい方法があるてっのか?
4-128クロエ今は言えない。
けど、ブラッディになら、なんとかできると思う。
4-129ブラッディアタシに?
4-130スピカなんだよ? はっきり言えよ、クロエ!
4-131クロエそれが、あたしにも、今はよく解らないんだよね。
そんな気がするだけなの。
4-132スピカちっ、それでも神様かよ、めんどくせーな。
4-133ブラッディじゃあクロエ、どうするんだ?
4-134クロエとりあえず、あたしたちも儀式に参列する。
そしたら、たぶん、解ると思う。
4-135レイワあなた、スピカって、もしかして、
ソロモンの守護神、スピカ・スカイユなの?
4-136スピカスピカ・スカイユはボクだけど、
守護神って、なんだよそれ。
4-137レイワわたしを覚えてない?
木屋平の山小屋で小さいころ
一緒に遊んだオオカミよ。
4-138スピカオオカミ? 遊んだ?
……も、もしかして、基地で大佐によく懐いてた、
銀毛の犬の……
思い出した! レイワって犬か!
4-139レイワそうよ、スピカ!
……犬じゃないけど……
4-140[ブラッディ]どうやら、人狼の(むすめ)レイワと
スピカは
過去に出会っているらしかった。
俄然(がぜん)ヤル気になったスピカは、
この町の人狼たちが(あが)める
ソロモンの守護神の名前を利用して、
《婚礼の儀》の参列を希望、
アタシらは、スピカの子分ってことで同席を許されたんだ。
そして、儀式が始まろうとする逢魔(おうま)が時、
アタシらは、スピカを先頭に
分厚く重い大きな扉が開かれた大広間に案内された。
儀式の祭壇の中心にはレイワが寝かされ、
祭壇の下に、あの人ニーナ・ジリンスカスが
こちらを(にら)むようにして立っていたんだ。
(BGM)(「あの日あの時」終了)
(ジングル)(「Runaway」)
5-1ミサキ出会いとは不思議なものです。
偶然なのか、
(いな)、もはや必然でしか
ありませんね〔小笑〕
さて、いよいよ城内に潜入した
スピカたち、
《婚礼の儀》の参列にまで漕ぎつけましたが、
儀式の妨害は、うーん、うまく行くとも思えませんね。
それでは、《第五章 王の血を受け継ぐもの》スタートです。
(ジングル)(「Fight oh!!」)
(BGM)(「Drain」開始)
5-2[リアン]私の名前は
《リアン・フェルナンデス大尉》、
モヨケイツーの剣・第13独立大隊の
副指揮官だ。
そして、人間じゃない。
人狼ってことでよろしく頼む。
人狼の里で久しぶりに会ったスピカだが、
ソロモンの監視任務でも《婚礼の儀》の招待客でもなかった。
スピカのことだから、なにかやらかすとは思っていたが。
ピンポンパンポーン♪
尺の都合上、大幅カットで進めるぞ。
スピカと会ってから三時間後の城の大広間での茶番劇から
物語は始まるんだが……。
5-3ナレーターA【城内の大広間にて】
(BGM)(「Drain」終了)
(BGM)(「ゴシック・ナイト」開始)
5-4スピカその儀式、ちょっと待ったー!
5-5リアンニーナ、案の定だ。始めやがったぜ。
スピカのやつ、バレバレだってのに。
5-6ニーナもう少し、黙って観ていようじゃないか。
5-7スピカソロモンの守護神、スピカ・スカイユの名に於いて命ずる!
なんていうか、その、人柱は中止だ!
5-8(ガヤ)――ザワザワ
5-9[リアン]そりゃ、ザワつくわな。
スピカは知らないだろうが、あいつが城内に入った時点から、
こちらの部下の耳のいい奴に監視をさせていた。
《婚礼の儀》を潰しにきたことは、早々にわかってたんだが、
クロエって(むすめ)
「ブラッディにならなんとかできる」って言葉に
ニーナがえらく興味を()かれたみたいだ。
それにスピカがどう動くのか面白そうだから
しばらく自由にさせておけってことでこの有様なんだがな。
5-10人狼町長スピカさま、なんと申されましたか。
人柱を中止せよと!
それでは、永きに(わた)って生き続けてきた
この町を(ほふ)るというのですか?!
5-11スピカレイワの命を使ってかよ?
そんなのボクが許すと思ってんのか?
5-12人狼町長レイワには、それが運命(さだめ)
レイワもそれは重々承知の上、
これが我ら一族の掟なのです。
5-13ちゆり掟、掟って、あなたたち、時代遅れにも程があるわよ。
人の命を使うですって、
そんなこと、この女神の私、真田ちゆりが許さないわよ!
5-14ニーナフッ、あの、黒髪、自分で女神と言うか。
5-15リアン話に聞いてる雷神()きの()だね。
化け物に向かって、あんな啖呵(たんか)
スピカの相棒なだけはあるわ。
……さて、ニーナ、そろそろ私が行こうか?
5-16ニーナ好きにしろ。
(BGM)(「ゴシック・ナイト」終了)
(BGM)(「Shred Dance」開始)
5-17リアンスピカ! 久しぶりに会ってなんだが、
いくらソロモンの守護神といっても、
オオカミの世界のことに、
いちいち首つっこんでんじゃねーぞ。
5-18スピカリアン、そんなこと関係ないね。
ボクはレイワを守る、それだけさ。
5-19リアンおまえは、昔から融通が利かないんだよ。
言ってるだろ、早死にするぞって。
5-20スピカ大きなお世話だよ、師匠。
5-21[リアン]私は素早くヒップ・ホルスターから拳銃を引き抜いた。
アタックで私より早い抜き打ち魔銃士(ガンナー)はいない。
まあ、弟子のスピカを除いてはな。
両肩に二発ほど撃ち込んでおけば黙るだろう。
さすがに丸腰のスピカに負けはしないと(たか)(くく)ってたんだが。
5-22ブラッディスピカ! つっこめ! 防御魔法陣!
5-23ナレーターB☆ スピカの前に魔法陣が展開し、
  リアンが放った二発の銃弾を弾き返した。
5-24リアンなっ! 魔法シールドか! あの赤髪(あかがみ)!!
げッ! スピカ!
5-25スピカ終わりだぁー!
5-26[リアン]かはっ!
私はスピカにあっさりと懐に潜り込まれて
腹に一発もらっちまった。
なんてスピードだ、一瞬にこの距離を詰めんのかよ。
ってそうか、サイクロプスを使役してから
魔力が上がったっていってたっけ。
それと鉄拳のスピカ、
そういえばステゴロの方が得意だったよな。
5-27スピカリアン、まだ、やるか?
5-28リアンやるなスピカ。こりゃ、私も本気を出さねぇとな。
5-29[リアン]スピカの右肩を掴んた私はそう呟くと、
すぐさま獣人モードに変身した。
5-30スピカなっ?! リアン、おまえ!!
5-31リアン驚いたか、私も実はオオカミなんだよ。
5-32スピカマジか! かっけぇー!
5-33リアンあん? こんなときに、なに言ってんだよ。
余裕ってか!
5-34ニーナリアン、もういい。
5-35[リアン]スピカの言葉に拍子抜けした私にニーナの声がかかった。
5-36ニーナスピカ、騒ぎを起こすなと言ったはずだが。
5-37スピカ少佐、少佐が人狼だってのは
大佐から聞いてたから知ってたけど、
まさかリアンもそうだったとは知らなかった。
だからなんですか? この儀式に二人がいるのは?
それともアタックの任務と関係があるんですか?
(BGM)(「Shred Dance」終了)
(BGM)(「審判の日」→「不倶戴天」開始)
5-38ニーナ任務ではない……
それはな、
私がオオカミ王の正統なる血を
受け継ぐ者だからだよ。
話はレイワから聞いたのだろう?
魔王の魔力がなくなった今、
触媒となる赤き石と私の血が混じり合うことで、
この町の魔力核炉(エンジン)は動き出す。
これは、魔王とオオカミ王の契約によるものだ。
5-39スピカ赤き石?
5-40ニーナ赤き石だ。
レイワの血族の乙女にのみ強制的に赤き石が魔術精製されるよう
魔王が自らの血を分け与えたシステムだ。
赤き石の精製にはレイワの魂が必要となる、すなわち死だ。
5-41スピカだから、レイワが死んでいいわけはない。
5-42リアンスピカ、この町はな、
人狼にとっての最後の聖域(サンクチュアリ)なんだよ。
5-43スピカだからって。
5-44ニーナそこの、クロエとか言ったか、すべてを話したぞ。
さあ、どうする。
それにブラッディ、私がおまえを救ったように、
今度はレイワをおまえが救う番ではないのか?
5-45クロエ
ブラッディ
あたし(アタシ)?
5-46[リアン]ニーナはそう言い終えると、
スピカの目の前に歩み寄り、私を退かせた。
5-47スピカ少佐、マジで()めてくれませんか……
5-48ニーナスピカ、おまえらは何をしようとしているのか
解っているのか?
これはわれら一族にとっての大事な儀式だぞ。
それを壊すことがどういうことか。
――まあいい、今は軍務ではない。
――鉄拳のスピカ、
私は一度、おまえと戦ってみたかったんだよ。
大佐が執拗におまえを擁護する本当の意味を知りたいんだよ。
(BGM)(「不倶戴天」終了)
5-49スピカ少佐といえど、ボクのジャマはさせない。
5-50リアンスピカ、バカか、あいつ。
(BGM)(「Crossing」開始)
5-51ニーナそうか、いい答えだ。
――来い! 餓沙王(がしゃおう)
5-52[リアン]ニーナが右手を高々と持ち上げた。
吹き抜けの高い天井に設けられた
天窓の一つが砕け散ったかと思うと、
落雷のごとき光が
ニーナの掌に吸い込まれた。
刹那ニーナの体全体が金色に輝く。
咄嗟にスピカは後方に飛び退く。
そして、そこに現れたのは愛剣餓沙王を持った、
半獣モードのニーナだった。
5-53スピカなんて、プレッシャーだ!
5-54ニーナスピカ、殺す気でこいよ。
5-55ちゆりスピカぁー!
5-56スピカちゆり、遠くに離れてろ。
5-57ダタラッチ『そろそろ、私の出番かな』
5-58スピカおそいぞ! ダタラッチ!
今までナニしてたんだよ。
5-59ダタラッチ『静観していたが。
 しかし、これほど強力な魔力の塊を、
 そうそう見れるもんではないのでな。
 少し興味が湧いた』
5-60スピカ勝てそうか?
5-61ダタラッチ『戦いとは、常に二手三手先を読んで行うものだ』
5-62スピカちっ、言ってろ。行くぞ! ダタラッチ。
(BGM)(「Crossing」終了)
(BGM)(「攻防戦」開始)
5-63ナレーターB☆ ニーナとスピカの
  激しい攻防が続く!
5-64スピカクソ! 剣尖(けんせん)を見切るのに手いっぱいか。
5-65ニーナ残念だよスピカ、拳が私に(かす)りもしないぞ (笑)
5-66スピカ(微笑) 少佐に本気なんて出せるわけないじゃん〔疲れた感じ〕
5-67ニーナそうか、ならば本気を出させてやろう。
おまえの大事な――黒髪の(むすめ)を殺してな!
5-67Bスピカちゆりぃー!
5-68[リアン]ニーナが目にも止まらぬスピードで黒髪の娘に切りかかる!
それ以上の速さでスピカも動いた!
黒髪の脳天を餓沙王が直撃するか否かの
(すん)でのところでスピカが黒髪を押し退け
眼前に迫る餓沙王を、赤く輝く両手で受け止めやがった。
マジか!
(BGM)(「攻防戦」終了)
(BGM)(「GAZE」開始)
5-69ニーナほう、やればできるじゃないか。
5-70スピカ少佐ぁぁー、あんたはボクを本気で怒らせた……
殺す!
5-71ナレーターB☆ スピカの碧眼が金色に変色した。
5-72ニーナフハハハハハ、いいぞ、スピカ、その目だ、
その目を待っていたぞ!
5-73[リアン]ピンポンパンポーン♪
この生アフレコショーじゃ、
戦闘シーンを表現するのって
結構無理があるんだよな。
まあ、これはアニメじゃないと
面白くないと思うんで、
壮絶な戦闘シーンはカットってことで了承してくれ。
で、まあ、二人の攻防の末、餓沙王の剣先が
スピカの目の前で止まったところからってことでよろしく。
5-74クロエストーップ!
5-75スピカなんだ?! 手足が動かない
5-76ニーナフッ、やっと答えが見つかったか。
5-77ダタラッチ『スピカ、足元を見ろ』
5-78スピカ魔法陣! ブラッディか!
5-79ブラッディクロエが答えを導き出した。
二人はもう戦わなくてもいいよ。
レイワも、この町も救えるんだ。
(BGM)(「GAZE」終了)
(BGM)(「思案のとき」開始)
5-80[リアン]ブラッディって()が魔法陣を解くと、
スピカがその場にへたりこんだ。
たぶん私だけが気づいたと
思うんだが、
ニーナの指先とつま先が
僅かに動いていたことに。
おそらくニーナにはブラッディって娘の
呪縛魔法は効いてなかったみたいだな。
5-81ニーナそうか、ならば、その方法を聞かせてくれるかな?
5-82ブラッディアタシの血だ。
5-83スピカ何言ってんだよ、ブラッディ。
5-84ナレーターB☆ ブラッディは自身の爪を伸ばすと、手首に切り傷を付けた。
  したたり落ちる血液が床に落ちると同時に
  赤い血は液体ではなく、
  コロンと音をたてて床を転がる小さな赤い石となった。
5-85ブラッディ思い出したんだよ。アタシが悪魔族に(とら)われていた日のことを、
アタシは毎日毎日血を採られていた。
なぜだかは解らなかったけど、
たぶんこれが奴らにとっての私を生かしておく理由だったんだ。
流れた血がなぜ石になるのか解らなかった。
きっと魔族の血を半分受け継いでいるからだと、
魔族ってのはこんなもんなんだと。
だけどクロエが教えてくれたんだ。
5-86クロエ確証はなかったけど、どの世界かの魔王の血が
赤き石《エリクサー》の原点だってのを思い出したの。
それと魔王が作った祭壇の悪魔文字の中に
ブラッディがよく使う同じ形の文字が読み取れた気がしてね。
もしかしてと思ってブラッディに出血させてみたら、
《エリクサー》になっちゃったからね。
5-87ブラッディだからアタシの血があれば、レイワは死ななくてすむはずだ!
5-88ニーナ上出来だ!
しかし、今はよくても、六十年後の儀式はどうする?
その次の六十年後は?
魔王のいない今、この儀式は未来永劫続くのだぞ。
5-89ブラッディそ、それは、その時に考える。
5-90ニーナ人間臭いことを、(もっと)もらしく言えるおまえたちには、
やはり理解などできまいな。
ブラッディ、いいことを教えてやる。
もう自分でも気づいているだろう。
おまえは、この町を作った魔王サテライヤと
人間の間に生まれた子供なんだよ。
解るか? この意味が、
私の同族が死ななくていい、触媒の赤き石などに頼らず、
おまえが魔力核炉(エンジン)と一つになれば
この町は永遠に生きることができるぞ。
(BGM)(「思案のとき」終了)
(BGM)(「宵のカラス」開始)
5-91ちゆりバカじゃないの。
それって、あなたが言った
人間臭い≠チてことじゃない!
ブラッディによく言えたもんね。
5-92スピカちゆり、()せ!
5-93ブラッディ……いいよ。
もともとアタシの命なんてなかったようなもんさ、
あなたに救われてなきゃね。
アタシ一人の命でこの先、だれも死ななくていいなら、
アタシの命なんかくれてやるよ!
5-94スピカバカ言うな!
5-95ちゆりバカ言わないで、ブラッディ。
5-96ブラッディいいんだよ、スピカ、ちゆり。
あんたらと過ごした日々は本当に楽しかったよ。
たぶん、こうなるのがアタシの運命だったんだよ。
今までありがとな。
5-97スピカボクは許さないぞ!
5-98ちゆりブラッディィー!
5-99クロエ――えっと、もう、いいかな……
ブラッディは死ななくても大丈夫なんだけど。
5-100ちゆりクロエ? どういうこと?
5-101クロエオオカミ王のお姫さまはもうわかってたと思うけど、
今までこの町を生かしてきた魔力核炉(エンジン)
不測の事態用に作られた緊急用のサブユニットなんだよ。
これは稼働時間が六十年しかもたない。
仕方のないことだけど触媒の赤き石を作るのに、
どうしてもレイワさんの一族の犠牲が必要だったの。
だけどメインの魔力核炉(エンジン)が動きだせばサブは必要なくなるのね。
そしたら魔王の血を受け継ぐ者、その魔力が絶えない限り
メインの魔力核炉(エンジン)が止まることはないよ。
5-102ブラッディなら、魔王の子であるアタシが生まれているのに、
なぜ、メインの魔力核炉(エンジン)は止まってたんだ?
5-103クロエそれは、魔王が死んだからだけど。
5-104ブラッディなら、アタシはいつ生まれたんだ?
5-105クロエ魔王がいつ死んだと思う。
この世界ではもう二千年以上も前になるかな。
(BGM)(「宵のカラス」終了)
(BGM)(「陰影」開始)
5-106ニーナほう、そんなにも大昔とはな。
私が知る限りメインの魔力核炉(エンジン)は数百年完璧に止まっていた。
それが十五年前、急に再起動を始めたんだよ。
なぜだと思う、魔王の血を受け継ぐ者の存在だ。
5-107スピカ少佐! ってことはブラッディはタイムトラベルして、
この世界に来たってことなんですか?
5-108ニーナフッ、そうなんだろうな。
まるで夢のような話だが、それ以外に考えられまい。
5-109ブラッディア、アタシが過去から来た……
5-110ニーナ私達、人狼側の組織とモヨケイツーの(けん)は、
五年もかけてようやくおまえに辿り着いたよ。
おまえがこの世界から消滅してもらっては困るのでな。
5-111スピカうん? ちょっと待てよ?
少佐? 今、再起動……って言いましたよね。
5-112ニーナそうだな。
5-113ちゆりなに? ってことは、人柱なんて必要ないんじゃ?
5-114クロエないね。メインの魔力核炉(エンジン)はもう動いてるし。
あたし、さっき『今までは』って言ったんだけど。
5-115スピカ
ちゆり
ってことは?
5-116リアンスピカ、ニーナの性格を理解しろよ。
5-117スピカえええ〜!
5-118ニーナそういうことだ。
5-119ちゆりなら! 儀式はなんのためにしようとしたのよ!
5-120リアンやれやれ、ニーナに向かって、スゴイなこの()
5-121ニーナ《婚礼の儀》は、我ら一族にとっての神聖な儀式だ、
()めることなどできるはずもない。
……まあ、これからは、今日(こんにち)までに
命を賭して町を守ってくれた
数多(あまた)の兄弟たちを弔う儀式となるだろうな。
(BGM)(「陰影」終了)
(BGM)(「星に祈りを」開始)
5-122スピカな、なんだったんだよ。
5-123ニーナスピカ、楽しませてもらったぞ。
5-124スピカボク、殺されかけてたんですけど。
5-125ニーナ貴様が死ぬタマか――
フフッ、おまえを殺せば、私が大佐に殺されるよ。
それだけは勘弁してくれ (笑)
5-126[リアン]とんだ茶番劇だったな。
――そうそう、実のところ、人狼の里の者には
メインの魔力核炉(エンジン)が復活していることは
知らされていなかったんだ。
今日の儀式で打ち明けられるはずだったんだが、
まさか、スピカたちの乱入があるとは、
さすがのニーナもこればっかりは予想してなかったんだよな。
5-127人狼町長姫様、それでは、レイワの命は、
レイワは助かるのですか?!
5-128ニーナ(はな)からそのつもりだったが、
ソロモンの守護神が余計なことをしてくれたおかげで、
言いそびれただけだがな。
5-129人狼町長おお〜、ありがとうございます、ありがとうございます。
5-130ニーナ礼は、そこの魔王の(むすめ)に言うんだな。
5-131ブラッディアタシが過去から来た……二千歳……二千歳……
5-132ちゆりブラッディ、ブラッディ、しっかりしてよ!
5-133ブラッディはっ、ち、ちゆり、ア、アタシは何歳に見える?
5-134ちゆりなにバカなこと言ってんのよ!
わたしたちと(おな)(どし)でしょ!
5-135ブラッディそ、そうだよな。
5-136ちゆりそんなことより、
まだ、やらなきゃいけないことがあるでしょ。
5-137ブラッディやらなきゃいけないこと?
5-138ちゆりジェイソンよ。
5-139ブラッディはっ、そうか。
5-140人狼町長魔王さま、レイワの命を救っていただきありがとうございます。
5-141ブラッディあんたがレイワのオヤジか。
アタシに感謝するんなら、
一つアタシの頼みを聞いてくれないかな。
5-142人狼町長はあー、なんなりとお申し付けください。
5-143ブラッディレイワを、レイワを結婚させてやってくれ。
5-144人狼町長け、結婚!?
あ、あ、あの、魔王さまの嫁にということでしょうか?
5-145ブラッディち、ちがうよ! 人間の男とだ。
5-146人狼町長人間と!
5-147ブラッディこれが、アタシからの頼みだ。
5-148人狼町長……そ、それは、人里に住む若者のことでしょうか?
5-149ブラッディ知ってるのか?
5-150人狼町長はい。前々から人間の男と会っているのは知っていましたが――
ど、どういたしましょう、ひ、姫様?
5-151ニーナブラッディ、我ら人外の者は、
人間とは生きる時間も心的傾向も違う。
それがどういうことを意味するか想像できるか?
5-152ブラッディできます。アタシ自身がそうだから。
だからこそ解るんです。
スピカ達と出会って、アタシは変われた。
だから、だからこそ。
5-153ニーナ町長(まちおさ)。だ、そうだ。
5-154人狼町長姫様。
5-155ニーナ魔王の頼みだ。仕方なかろう。
5-156リアンニーナ、いいのか?
5-157ニーナふっ、かまわんさ。
リアン、私も一度、人間の男を愛したことがあるんだぞ。
5-158リアンニーナが。
5-159ニーナああ、そいつは私にこう言ったよ、
『おまえがなんであろうと、燃え上がればなにも見えなくなる、
それが俺の愛だ』とな。
5-160リアン……そいつは、もう死んだのか?
5-161ニーナピンピンしているよ。
私というものがありながら、今は他の女にご執心(しゅうしん)だ (笑)
5-162リアンニーナ、もしかして、それって?
5-163ニーナふふ、さあな。
5-164[リアン]私はそれが誰なのか、解った気がしたが
口に出すのは()めにした。
茶番劇が終わって、
私たちは新たな《婚礼の儀》を無事に終わらせた。
スピカたちは、儀式には参加せず、
夜が()けきる前に来た道を帰ると言って城を出た。
(BGM)(「星に祈りを」終了)
(ジングル)(「Runaway」)
6-1ミサキさて、とりあえずは
丸く収まったようでなにより、
彼女たちの冒険はここまでです。
それでは
《第六章 少女たちの帰る場所》
(ジングル)(「Fight oh!!」)
(BGM)(「星の輝きの下で」開始)
6-2クロエレイワさんを起こしてきたよ。
事情も記憶層にインストール
しといた。
6-3ブラッディおまえってなんでもできるんだな。
6-4クロエなんでもはできない。できることだけ。
6-5レイワスピカ、ありがとう。
6-6スピカボクよりブラッディにだろ。
6-7レイワ魔王さま、ありがとうございます。
さっき、姫様と父上からも聞きました、ジェイソンとのこと。
6-8ブラッディ幸せになりなよ。
それより、みんなにも礼を言っときな。
6-9レイワみなさん、ほんとにありがとう。
6-10ちゆりジェイソン君が浮気なんかしたら、とっちめてあげるから、
この女神さまに連絡するのよ。
6-11クロエ元気でね。
6-12時雨せんぱーい! もう、帰るん?
6-13スピカ時雨とリンダ。ああ、なんか疲れたからな。
6-14リンダ少尉、ソロモンの守護神として、
儀式の参加を頼まれていたじゃないの?
それに泊まっていけって少佐にも言われていたのに、
もう帰っちゃうのかしら。
6-15スピカそれだよ。それがめんどくさいんだよな。
どうせニーナ少佐のことだから、
バカ大佐の悪口を散々聞かされるのなんてごめんだよ、
あ〜ウザい。
6-16ちゆりそうなんだ。
6-17スピカそっ、あの二人、昔っから、仲が悪いんだよ。
6-18ブラッディおーい、スピカ! おいてくぞー。
6-19レイワありがとう、スピカ。
6-20スピカまたな。
6-21[ちゆり]そして、私たちはもと来た道を
歩いて、町の外に出ました。
もおぉ〜、ほんとは泊まって
いきたかったのに!
なんで暗い山道を歩いて
帰らなきゃなんないのよ!
はぁー、クロエが言うには、
もといた時間に帰るには
同じ場所じゃなきゃいけないみたいなんです。
6-22クロエあっ、思い出した!
6-23ブラッディなんだよ?
6-24クロエレイワさんのことなんだけどね。人間にできるんだった。
6-25ブラッディほんとうか?
6-26スピカなんだよそれ?
6-27クロエ正確には、オオカミになれなくして
人間の寿命を与えるって感じかな。
鹿名時雨ってネクロマンサーがいたでしょ。
あの子の魔術とブラッディの血液があれば可能なんだよね。
6-28ブラッディ赤き石でか?
6-29クロエそう、ブラッディは知らないかも
なんだけど、
赤き石はね、別名《賢者の石》
そして《エリクサー》って
呼ばれてて、
それを触媒に人間を不老不死にする
力があるのね。
それを行うのには、かなり高等な魔術が必要なんだけど、
鹿名時雨ならできる。
で、鹿名時雨がそれ≠やっちゃうと、
自動的にマミルカの呪いがレイワさんにかかっちゃうんだ。
すると人間が不老不死になる反対版になっちゃうんだよ。
6-30スピカ呪い? 聖宝マミルカのか、
あいつにそんなことできるのか?
6-31クロエできる。鹿名時雨はマミルカの呪いを受けた、
この世界、唯一の存在だからね。
それにマミルカにすごく嫌われてるからね。
6-32ブラッディよくわからんが、その時が来れば、
そうしてやったらいいんじゃないか。
6-33ちゆりそうね、レイワさんもジェイソンさんも、
二人ともまだ若いんだし、男の人からしてみれば、
奥さんがいつまでも若くてピチピチのほうがいいんだから。
6-34スピカちゆりってば、発想がオヤジだなー。
6-35クロエさて、みんなどうする? 13日の金曜日に戻る?
6-36ちゆりまだ山の頂上じゃない?
6-37クロエあれあれ。あの木、なんの木?
6-38スピカバス停の入口があった大木か?
6-39クロエそう、川を下らなくても、
あの木の扉から聖バレンシア女子学院に帰れる気がする。
今現在、あたしたちを想ってくれてるつくねたちがいれば、
扉の先はバス停じゃなくて、
14日の土曜日の今の時間だと思うんだけどな。
6-40スピカほんとかよ……まあ、試してみるか。
6-41ブラッディそうだな……アタシはあの人、ニーナさんにも逢えたし、
レイワたちのことも忘れるのは嫌だから
14日の土曜日、今日でいいよ。
6-42ちゆりええ〜、過去に戻って実験したみたくないの?!
6-43スピカボクも今日でいいかな。
6-44ちゆりええ〜、スピカまで、なに言ってんのよー。
6-45クロエじゃあ、ちゆりだけ13日の金曜日に戻る?
6-46ちゆりって、なんで私だけなのよ!
6-47スピカ
ブラッディ
クロエ
(笑)
6-48スピカんじゃ、帰ろうか。
6-49[ちゆり]そして、クロエが大木に触れると昼間の扉が現れました。
それ≠ノブラッディが魔法陣を(えが)きました。
スピカがゆっくりと扉を開くと。
6-50美弥あっ、帰ってきた。
6-51スピカおっ、みんな()んじゃん。
6-52クロエただいまぁ。
6-53いよ
咲希
おかえり
(おかえりもぉー)。
6-54ブラッディどうして? みんな?
6-55つくね今日はお月見、焼き鳥大吉上牧店出張バーベキューっちゃ。
6-56ちゆりみんなぁ〜、心配かけたわね。
6-57つくね別に心配はしとらんばってん、
ちゆりたち抜きのお月見ナイトなんて面白かなか。
今夜は仕切り直したい。
6-58ソフィーもう、みなさん心配かけさせないでくださいよ〜 (笑)
6-59[ちゆり]やっぱり友達って最高です。
そしてみんなで満月の下、
バーベキューを楽しみました。
おわり。
6-60スピカ……なんか? 忘れてないか?
6-61ミサキおっと、これは失敬、
完全に忘れていました。
ジェイソン君ですが、
一晩中、バス停でスピカたちを
待っていたようですね……
そして、山頂から(こぼ)れる
淡いピンク色の光に包まれだした
ジェイソン君の目の前に、
人狼の里へと繋がる不思議な魔法陣が現れたかと思うと……
朝日に照らされた……
6-62レイワジェイソン……
6-63ジェイソンレイワ、大丈夫だったのか? 魔王、あいつらは?
(BGM)(「星の輝きの下で」終了)
(BGM)(エンディング「Love Song For You」開始)
6-64レイワ私を助けてくれて、帰っていったわ。
6-65ジェイソン……そうか……レイワ、
これからはずっと、ずっと俺と一緒にいてくれ。
6-66レイワありがとう……うれしい……

サブライブ!ペガ!! Vol.4 の公開アフレコのタイミングの参考にするために作成された
「仮組テキスト版」の音声データをダウンロードすることができます。
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第1章 第2章 第3章 第4章 第5章 第6章